2015 Fiscal Year Research-status Report
オスマン朝アジア境域のフロンティア社会―アナトリア南東部の地域史の解明を目指して
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25370825
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
齋藤 久美子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (90432046)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トルコ / アナトリア南東部 / オスマン朝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績の概要は以下の通りである。夏期にトルコとコソヴォで資料調査と史跡調査を行った。2015年8月にコソヴォ・プリシュティナ市およびその近郊でオスマン史にかかわる資料調査と史跡調査を行った。トルコに関しては、トルコ南東部での急激な治安悪化を受けて、予定していたヴァンとヒザンでの現地調査を中止し、イスタンブル市に所在する首相府オスマン文書館やイスラーム研究所附属図書館等において資料調査を行うとともに新刊の研究書を収集した。また研究協力者であるヴァンのユズンジュユル大学准教授ハサン・チチェクと調査予定地の治安状況や今後の現地調査について電話で打ち合わせをした。国内では、2015年7月に東北学院大学で開催されたアレヴィー/ベクタシー研究会の運営に携わると同時に、ヨーロッパでのトルコ系・クルド系移民やトルコのアレヴィーの歴史や社会に関する発表を拝聴し意見交換を行った。また、2015年7月に刊行された近藤信彰(編)『近世イスラーム国家史研究の現在』で「オスマン朝のクズルバシュ対策」と題する学術論文を発表した。2016年1月には立教大学池袋キャンパスで開催された「近代移行期の港市と内陸後背地の関係に見る自然・世界・社会観の変容」研究会で「南東アナトリア交易路の表と裏ーオスマン政府による統制とその限界」と題する研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2015年6月のトルコでの総選挙以降、トルコ南東部では軍によるクルド系反政府組織の掃討作戦が続いており、トルコ南東部の調査地に入ることが不可能であるため。さらに、研究課題にかかわる論文作成のために、トルコのイスタンブルやアンカラ等の研究機関での調査の必要性があるにもかかわらず、クルド系反政府組織やISIS(イスラム国)によるテロ事件が連続して発生しており、今後もテロ発生の可能性が高いため、渡航の判断が極めて難しい状況になっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
トルコ南東部の現地調査については治安の改善が望めないため中止の方向で考えている。イスタンブルやアンカラ等の文書館や図書館等での資料収集については、当地の治安状況を慎重に見極めたうえで判断する。トルコでの資料調査の実施の有無に関わらず、これまで収集した資料の分析を進め、学術論文として発表するべく準備する。
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Causes of Carryover |
2015年の夏以降、トルコ南東部では軍によるクルド系反政府組織の掃討作戦が続いており、トルコ南東部の現地調査地に入れないことに加え、研究課題に関わる論文執筆のためトルコの研究機関での調査が必要であるにもかかわらず、クルド系反政府組織やISIS(イスラム国)によるテロ事件が連続して発生し、今後もテロ発生の可能性が高いため、渡航判断が極めて難しい状況である。以上の理由から、研究計画の見直しが必要になり、補助事業期間を延長したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
トルコの治安状況の改善が見られれば、同国の研究機関での資料調査のための旅費として、また研究課題にかかわる外国語の学術論文執筆のための謝金として使用する。
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