2014 Fiscal Year Research-status Report
出土文字資料と現地調査による河西回廊オアシス地域の歴史的構造の研究
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25370831
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
坂尻 彰宏 大阪大学, 全学教育推進機構, 准教授 (30512933)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 出土文字資料 / 中国現地調査 / 河西回廊 / 祁連山脈 / オアシス地域 / 敦煌 / 張掖 / 遺跡調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は、中国での現地調査を実行した。また、海外での文献調査や学術情報の発信・収集を行った。 まず、中国での現地調査としては、甘粛省・河西回廊オアシス地域での現地調査を行った。実際の調査にあたっては、連携研究者を含む調査隊を編制し、祁連山脈方面の山地や砂漠に点在する遺跡等を実地に観察することができた。山地調査では、敦煌オアシス南方の粛北蒙古族自治県の高度3200メートル付近の地点、ならびに張掖オアシス南方の粛南裕固族自治県の紅湾寺(2300メートル付近)を実見した。いずれもオアシスの水源にあたり、山間草原など遊牧民の世界とも繋がりが深い景観を観察することができた。遺跡調査では出土文字資料にも記録のある敦煌オアシス周辺の全11カ所の都市遺跡を踏破し、詳細に観察することができた。 次に、海外での出土文字資料所蔵機関等における文献調査としては、ロシア・サンクトペテルブルク・東方文献研究所と中国・北京・国家図書館において調査を行った。ロシアの調査は連携研究者の赤木崇敏が、中国の調査は同じく連携研究者の岩尾一史が担当した。赤木は、本研究に関連するロシア所蔵資料を網羅的に調査し整理した。岩尾は、非常にアクセスが困難な中国所蔵資料の原物調査に成功し、本研究遂行に資する貴重なデータを収集した。なお、岩尾は米国・プリンストン大学で行われた学会(Prospects for the Study of Dunhuang Manuscripts: The Next 20 Years)に参加し、本研究に関する学術情報の発信・収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、平成26年度の研究予定事項は中国・甘粛省・河西回廊オアシス地域での現地調査を行うことを主とするものであった。平成25年度の予備調査の成果を生かし、平成26年度の本調査では、調査を予定していた山地や遺跡のすべてを実見することに成功した。調査では詳細な行動記録を作り、調査隊のメンバーで役割分担を行い、本研究の材料となる景観や遺跡の情報を十分に収集することができた。 また、平成25年度に所蔵機関側の理由で調査が不十分だったヨーロッパ・ロシアなどの海外に所蔵される出土文字資料の原物調査についても進展した。今年度は、連携研究者4名のうち、2名がロシアと中国に渡航調査を行い、本研究の基礎となる敦煌文献等の出土文字資料の原物から、十分な情報を収集することができた。とりわけ、閲覧が困難な中国・北京・国家図書館の資料を調査できたことは大きな収穫であった。 以上の理由により本研究が「おおむね順調に進展している」状態であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、平成25年度から平成26年度までの調査・研究成果をまとめ、発信することが主となる。まず、本研究の成果を公表し議論する場として、現地調査報告会を兼ねた国際ワークショップを平成27年秋に開催する。開催場所や連携研究者間の調整はすでに完了しており、中国から招致する中国人研究者についても、先方の意向を確認し招致の計画をほぼ終えている。また、こうした議論の場を経た最終的な成果物として、本研究の報告書を作成する。なお、この報告書は研究代表者が所属する大阪大学の電子リポジトリ(OUKA)にすみやかに掲載し、インターネット上で無償かつ無制限に公開する。
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Causes of Carryover |
平成26年度に行った中国での現地調査に参加を予定していた連携研究者の1人が、事情により参加できなかったことが主な理由である。本来の予定では、研究代表者1人ならびに連携研究者4人による5名の調査隊を計画し、5名分の海外旅費を準備していた。しかし、連携研究者の佐藤貴保が、やむを得ない公務により渡航できず。調査隊にかかわる1名分の費用を使用することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外の所蔵機関での出土文字資料の原物調査等を確実かつ柔軟に実施する。平成25年度に各所蔵機関側で生じていた障害は、ほとんどは解消しており、本年度の調査は滞りなく行える状況にある。そこで、本研究の調査対象であるイギリスあるいはフランスの機関での調査実施を行い、本研究遂行のための情報をより多く集める予定である。なお、調査・研究の進展にともなって本研究の遂行に資する用途が別に生じた場合は柔軟に対応する。
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