2013 Fiscal Year Research-status Report
リキアにおける都市アイデンティティの形成と展開ー碑文習慣の展開からの考察
Project/Area Number |
25370868
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
師尾 晶子 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (10296329)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 創 東京大学, 総合文化研究科, 講師 (50647906)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 地中海世界 / 東地中海世界 / リキア / アイデンティティ / 同盟 / 条約 / 地方史 / ローカルヒストリー |
Research Abstract |
今年度は、リキア諸都市間の条約、同盟等に関する碑文の内容の理解を深めるために、何よりも現地を訪問し、都市と都市との距離、地形を知ることを重点に置いた。その一環として、8月上旬から9月にかけて、代表者が研究分担者となっている[古代・中世地中海世界における宗教空間と社会変動―トロス遺跡聖堂遺構の発掘調査」(基盤研究(b)海外学術、研究代表者:浦野聡)とも関連して、リキア地方の都市トロス遺跡の発掘調査に参加するとともに、他のリキア都市の遺跡調査をおこなった。また、リキアの対岸に位置するロドスの遺跡調査におもむき、ここでは墓碑銘を中心にリキア諸都市出身者がどれほどいるかについて調査をおこなった。2月に再度リキアを訪れ、8月に訪れることのできなかった都市を中心に調査をおこなった。 初年度となる今年度は、基礎史料を収集し、読み込むことに重点を置いた。とくにリキア諸都市間で同盟が締結されるときに語られることのある、当該諸都市が同じルーツをもつということが意識された「シュンゲネイア」という表現の出てくる碑文を中心に分析を含め、それがどのような文脈で使われているのかについての考察をすすめつつある。また、地方史あるいはより私的な歴史を刻んだ碑文についても収集し、上記の碑文とともにリキアというアイデンティティがどのように形成されてきているかについて考察した。史料の読み込みにはまだ時間を要するが、次年度までには新たな知見を得られる見通しが立てられるのではないかと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、研究代表者、研究分担者ともに個別の研究を進めることを優先した。まずは、個々が研究課題についての研究状況をより深く知る必要があったからである。代表者は、夏季(8~9月)と冬季(2月)の2度にわたりリキア各都市の現地調査をおこない、現地の地形と碑文建立の場の確認に努めた(冬季の調査の経費は本科研からは支出されていない)。こうした状況もあり、大きな成果のとりまとめは次年度以降になる。なお関連して基礎的資料の収集もおこなった。とくに代表者は、これまでほとんど所持していなかったリキア地方の碑文集の収集にも努めた。また、同研究課題について、共同研究をおこなう可能性のある研究者と接触し、共同研究会の開催の下地をつくることに努めた。このような基礎的な作業と研究にほとんどの時間を費やすこととなり、当初の研究計画よりもやや遅れた状態で研究がすすめられている状況にある。 なお、初年度は他の研究プロジェクトの集大成の時期とも重なったことから、予想以上にそちらの成果のとりまとめに時間を要したことも研究の進行がやや遅れた原因となった。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は、昨年度につづいて史料の読み込みと分析、および関連研究文献の渉猟と講読をすすめ、当初の研究成果の見通しの再検討をおこなう。また、分担者とは定期的に情報交換をしながら、研究会とワークショップの準備をすすめる。 代表者は、とくにリキアにおける地方史の記載から同族意識の形成と展開がどのように語られているかを分析し、リキア地方においてギリシア語が受容されて以降にこれらがギリシア語で記載された背景について、他地域との比較も念頭に置きながら考察をすすめる。書かれた時代における国際関係がこれらの記述に大きな影響をあたえたことは確かであるが、果たして原因はそれだけなのか、それ以外にいかなる内実が認められるかについて考察していくことが重要だと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
リキアをめぐる研究は研究史が浅い。しかしながら、近年若手研究者を中心に我が国においてもリキア研究に関心を持つ研究者がわずかながら現れてきた。基盤研究Cという限られた予算ではあるが、充実した研究成果をあげるためには彼らの協力と参加を得てワークショップを開催し、互いの知見をもとにディスカッションを重ねることが必要と感じ、それらを2年目、3年目に企画するために初年度の支出を抑えた。具体的には、物品購入は書籍にほぼ限定することでそれを実現した。 上記のように、2年目、3年目に研究会、その集大成としてのワークショップないしシンポジウムを開催することを計画している。その際の参加者の旅費に使用される予定である。2年目に国内研究者を中心とした研究会を、3年目の早い時点で、海外研究者を交えてのワークショップないしシンポジウムを開催する予定である。こうした計画については、関係者に随時話をし、具体化に向けて計画をすすめている。 一方、当初の旅費の予算については、考古学にも詳しい研究協力者(1年目は奈良澤由美、2年目は向井朋生)と現地調査をおこなうために使用される予定である。
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Research Products
(10 results)