2015 Fiscal Year Research-status Report
16-19世紀におけるトスカナの封建貴族層とその社会的役割
Project/Area Number |
25370876
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
北田 葉子 明治大学, 商学部, 教授 (30316161)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 貴族 / トスカーナ大公国 / イタリア / 紛争解決 / コジモ1世 / フィレンツェ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、トスカーナの封建貴族層の書簡の検討中に、書簡とは別の史料を見つけることができた。マジストラート・スプレーモの史料群である。マジストラート・スプレーモは、君主の諮問機関であり、最高裁判所の役割を担っていた。最高裁判所の機能の一つとして、封建貴族の一族間の争いもこのマジストラート・スプレーモの担当となっていた。そのため、この機関の一連の史料は、封建貴族の一族内でどんな紛争が起こっていたか、そしてそれがどのように解決されたのかを明らかにしてくれる点で、非常に貴重である。今年度は、とくにモンテ・サンタ・マリア候ブルボン家とモンタウート家を中心に、この史料を分析した。両家の中で紛争が起こっていたことが分かっている1560年代、1570年代をみた結果、どちらの家も一族間の紛争の解決のために、マジストラート・スプレーモにかなり依存していることが判明した。ただしこの機関の決定は、君主の意向に動かされることも多く、君主との関係が非常に重要になる。封建貴族内の紛争解決がどのようになされていたのか、今後さらに踏み込んだ分析を行っていきたい。 また本年度は、バルディ家の一族内紛争とその解決についての論文が、イタリアの雑誌Archivio Storico Italianoに出版された。さらに、モンテ・サンタ・マリア候ブルボン家とコジモ1世の関係についても論文にまとめることができた。 本年度はさらに個人所蔵の史料の利用可能性を探った。残念ながら、確実に今回の調査に役立つ史料があるという確証は得られなかった。個人所蔵の史料は、閲覧の許可までに時間がかかり、また公共交通機関では行きにくい場所にあるものも多いため、今回の調査では利用しないことに決定した。その代わりに、前述したマジストラート・スプレーモの史料の分析に力を入れることとする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個人蔵の史料は利用しないこととなったが、それに代わる新たな史料群を発見した。しかも新たな史料群はフィレンツェ国立古文書館で閲覧することができ、より効率的に史料を集めることができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
長期休暇期間を利用して、フィレンツェ国立古文書館やフィレンツェ国立中央図書館で調査を行い、新たな史料群の読解、分析を進める。また、研究文献や同時代の史料などから17世紀以降の各家の状況についての情報をさらに収集する。とくに、トスカーナ大公国の宮廷や書記局においてフィレンツェ人の力が増大し、相対的に封建貴族層の力が弱くなると思われる17世紀後半に着目したい。
|
Causes of Carryover |
本大学においては、今年度使用経費として利用できるのは3月初めまでに限られている。しかしこの時期には入試業務などが集中しており、十分に研究することができない。研究に専念できる3月に研究費を大量に使用する可能性を考えて、研究費を残した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに昨年度の残額として残した分のほとんどを、3月中旬以降の春期休暇の間に使用している。主に書籍と文具代に使用した。
|
Research Products
(3 results)