2015 Fiscal Year Annual Research Report
紀元前一千年紀後半代の東北北部における磨製石斧の流通構造の基礎的研究
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25370884
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
佐藤 由紀男 岩手大学, 教育学部, 教授 (00552613)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 比重計測 / 元素分析 / 三面石斧 / 層灰岩製片刃石斧 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も継続して紀元前一千年紀後半代の東北北部・北海道・西日本の磨製石斧の分析を実施し、三地域間の流通構造の把握に努めた。 北海道・東北北部出土の緑色片岩製磨製石斧の、蛍光X線による元素分析の計測作業は前年度までに終了していたので、今年度はそのデータ分析を実施し、当該期の東北北部の資料は北海道の夕張川流域の石材が使用された蓋然性が極めて高いことを明らかにした。従来行われていた剥片資料の偏光顕微鏡観察では、額平川流域の石材と考えられていたが、より厳密な産地同定法である元素分析で異なる結果を得ることができたのは大きな成果であった。 西日本の資料に関する観察と比重計測は山陰と北陸において実施した。山陰では出雲市矢野遺跡、鳥取市本高弓ノ木遺跡資料ほかについて実施し、基礎データを得た。北陸では福井市甑谷遺跡、小松市八日市地方遺跡、羽咋市吉崎次場遺跡資料ほかについて実施した。 北海道については羅臼町タッカリウス北岸1遺跡、札幌市H37遺跡・K39遺跡資料ほかについて実施し、基礎データを得た。これにより、北海道の緑色片岩・青色片岩製磨製石斧や三面石斧に関する主な資料の比重データを得ることができた。 今年度のもう一つの大きな成果は、北陸の八日市地方遺跡で九州北部系の層灰岩製片刃石斧と北海道系の三面石斧を確認できたことである。層灰岩製片刃石斧は肉眼観察と、これまで実施してきた九州北部から山陰での比重調査の結果から判断して、九州北部からの搬入品と判断される。北海道系の三面石斧も肉眼観察とこれまでの比重調査の成果から、北海道もしくは東北北部からの搬入品と判断される。九州北部系と北海道系の磨製石斧を同一の遺跡で確認できたのは、これが唯一の事例であり、はじめて当該期における両地域間の流通構造上の接点を把握できた。東北北部の当該期に、西日本から灌漑水田が波及する背景を考える上でも重要な成果である。
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Research Products
(2 results)