2014 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災による福島県の中心性と圏域の変容に関する地理学的研究
Project/Area Number |
25370911
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
水野 勲 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (50209764)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 直子(石黒直子) お茶の水女子大学, その他部局等, 准教授 (60433231) [Withdrawn]
小田 隆史 宮城教育大学, 教育復興支援センター, 特任准教授 (60628551)
関根 良平 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (90333781)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 中心性 / 避難 / 圏域 / 農産物 / 福島県 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1年度の先行研究レビューに基づいて、それぞれのテーマで3つの調査・研究を行った。すなわち、①原発事故直後の避難者・学校・役場の移動空間、②言説における「福島」という地名の地理的スケール、③福島県産農産物の流通、についてである。 ①では、福島県内市町村の鉄道・バス、自動車による近接性の変容を時間距離データ、GIS分析、Q分析を通じて明らかにして、その結果を避難者・学校・役場の移動と関連付けた。福島県内は、流域生活圏として浜通り、中通り、会津に分かれてきたが、原発事故によって浜通りが分断され、また浜通りから中通りへの避難者・学校・役場の移動によって、新たな地域編成が起こった。以上の成果を、全米地理学会にて発表した。 ②では、分析哲学の固有名論、地理的スケールの社会構築論を用いて、「福島」という地名の機能を「空間の政治」と結び付けて分析した。マスメディアなどで「福島」が福島県という行政組織・領域として固定して結び付けられ、その結果、原発事故の地理的影響が過小評価されてしまうだけでなく、家族やコミュニティの間でも生じている放射能不安による分断が起こっていることを示した。この成果は、論文2編、研究会発表1回で報告した。 ③では、福島県産農産物の流通過程を、特に放射線量検査と「風評被害」に関連付けて調査するために、まず福島県の放射線量がマスメディア等でどのように伝えられ、場所イメージを作っていったかを調査した。また、見えない放射線に不安を感じる地域で調査をする際の方法について、「地元」「内部者」の観点から考察した。この成果を、共著書の2つの章で論文として発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題のサブテーマ3件のそれぞれについて、論文や学会発表を行うことができた。特に、原発事故後の避難空間については国際学会での発表を、「福島」という地名の機能については英文論文として発表しており、海外の研究者と議論が可能な形で発表した。福島県産農産物の流通については、調査方法の検討と、風評の情報空間を明らかにして、第3年度の本調査の基礎とした。流域圏については、個々の成果発表の中に取り込んで説明した。
|
Strategy for Future Research Activity |
第2年度のサブテーマをそれぞれが推進するだけでなく、3名の共同研究者による福島県内の農産物流通についての基礎調査を行って、福島県の生活圏や生産・流通構造の変容を総合的に理解することにする。 最終的には、3名の総合議論によって、数理地理学・社会地理学・農業地理学の共同、首都圏在住・福島県出身の共同をはかっていきたい。
|
Causes of Carryover |
福島県内の放射能汚染地帯の調査を行うために、調査方法や調査協力期間との調整を慎重に行う必要があり、そのための情報収集と予察的な学会報告を先に行っていたため、調査旅費・調査費を使用しなかったことによる。また学会報告、学会参加が、東京と仙台という、いずれも旅費が必要でない会場だったことも、出張旅費の未使用となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度に、メンバー個別の調査と3名の共同調査を行う予定でいるため、この際に調査旅費・謝金・資料印刷代等で多くの費用がかかる見込みである。また、英文論文の校閲料なども、見込んでいる。
|