2013 Fiscal Year Research-status Report
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25370927
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
三木 理史 奈良大学, 文学部, 教授 (60239209)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 南満洲鉄道 / 大豆輸送 / 石炭輸送 / 撫順炭鉱 / 満洲交通史稿 / 勝田家文書 / 村上義一文書 / 米国議会図書館 |
Research Abstract |
平成25年度は当初大豆輸送に重点を置いた研究を推進する予定であったが、24年度中の予備調査で一定の成果を得ていたため、その成果発表と石炭輸送に重点を置いた。成果は『人文地理』第65巻第2号に論文として掲載された。また、石炭輸送については、まず5月に国立公文書館つくば分館で「勝田家文書」の調査を行い、さらに北海道大学附属図書館、神戸大学附属図書館、国立国会図書館、アジア経済研究所図書館等で関連資料の収集を行った。 また、本科研費を使用しなかったが、米国議会図書館を訪問して関連資料の収集を行った。しかし、中国については日中関係の悪化に加え、資料公開の停滞もあって、今年度は調査を見送ることにした。 一方、市販されている満鉄関係資料の購入を積極的に進めることで、上記の中国での資料公開の遅れを補完するように努めた。まず当初から購入予定であった遼寧省档案館所蔵の『満洲交通史稿』を予定通り購入することができた。それは必ずしも一次資料とはいえないものの、それに準ずる叙述や資料を多数含んでおり、実際撫順炭礦からの石炭輸送貨物列車の運行を円滑化するために採られた施策を知ることができた。また、地誌的資料として『満洲事情』復刻版を購入し、草創期の対象地域の一般的事情を解明する資料として活用した。さらに本科研費を用いなかったが、慶應義塾大学所蔵「村上義一文書」マイクロフィルム版を全巻購入して、本務校図書館のマイクロリーダを用いてPDF化したうえで研究に活用できるようにしている。 石炭輸送に関わる研究は概ね完成しつつあり、その成果は2014年4月の人文地理学会歴史地理研究部会で「1920年代南満洲鉄道における撫順炭輸送」として報告することになっている。その後そこでの討論内容を踏まえて内容を再検討し、しかるべき学術雑誌等に成果を報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前述のように当初の予定より約1年程度早く研究が進行しつつあり、その成果の報告もそれに準じて早めに進めつつある。但し、そうした研究の進展によって当初は取り扱う予定のなかった新たな課題も浮上してきている。 たとえば、2013年夏の米国議会図書館において安奉線改軌に関わる非常に詳細な報告書に接することができ、とりあえずそれをデジタルカメラで撮影してきた。それを国内の関連資料と組み合わせることで、満鉄成立間もない時期の満洲における資材輸送状況や、それに関わっての工事状況に関する研究が可能であることが明らかになってきた。現在のところ2015年度にその成果を報告できるようにする予定である。 一方、中国国内の調査は日中関係の悪化によって、档案館はもとより、図書館でさえ資料収集の可能性が低くなっており大きな懸念材料となっている。当面は現地踏査しか不可能と思われ、国内での研究の進展を見ながら、それに要求される現地踏査を夏場に実施するかどうかを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は、当初15年度に予定していた中国人苦力に関する旅客輸送の解明を、1年前倒しにして重点を置いて取り組む予定である。すでに米国議会図書館はもとより、国内の各所蔵機関に保存されている関係資料は概ね収集を終えつつあり、間もなくその分析に取りかかる予定である。 目録さえ未公開の档案館所蔵の一次史料を別にすれば、苦力の旅客輸送は主として当時刊行された報告書が主要な資料になり、中国の資料公開如何の影響は比較的少ないものと考えられる。 しかし、当時の刊行資料は主として「移民調査」の観点からなされたものが中心で、その「移動手段」に対する意識は二次的なものが多い。そのため旅客輸送の実態に迫るにはさまざまな資料の組み合わせに拠らざるをえないのが実状である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日中関係の悪化により中国の資料調査が不可能となったこと、および他の科学研究費により米国調査の旅費を充当できたことによる。 可能となれば中国の現地踏査を行う。また、それが困難な場合には日本国内の資料収集をより広域的に実施すると同時に、復刻資料の購入などに充当する予定である。
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Research Products
(4 results)