2015 Fiscal Year Annual Research Report
福島原発事故後の新たな原発安全規制の課題と脱原発をめぐる法律問題
Project/Area Number |
25380046
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
首藤 重幸 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00135097)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 福島原発事故 / 原発規制組織 / 原発民事訴訟廃止論 / 原発住民避難計画 / 原発規制手続 / 原子力安全協定 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年間の研究の最終年度に設定した<原子力法研究についてのアジアの行政法研究者のネットワーク>を作るとの研究目標については、2016年2月に韓国、同年3月に台湾を訪問して、その基礎を作ることができた。そして、現地での行政法研究者、原発訴訟を担当している弁護士や裁判官との研究交流から、福島原発事故の教訓を、新たに行政法的なレベルに再構成することの重要性を再認識し、各国でネットワーク作りの構想に賛同をして頂いた。予定していた(これから原発を導入する計画の)ベトナム訪問については実現できなかったが、この点については、残された課題として2016年度に訪問したいと考えている。 もう一つの3年目の研究計画の柱が、<原子力防災にとっての自治体の位置づけ>であった。これについては、まず、砂上の楼閣と批判されている原発の過酷事故発生時の住民避難計画について、現地調査を実施したうえで検討した。具体的には愛媛県の伊方原発にかかわる避難計画の現地調査を行い、避難ルートとされている道路や、大分県に避難する際の港湾(利用されるフェリーの船長経験者の聞き取りもおこなった)等を詳細に調査した。愛媛県の計画は、地震のみを想定したものであり(津波との複合災害を十分に想定していない)、道路の状況(山崩れの危険も含め)や港湾の形状・風向等の観点からして、かなり楽観的な計画であった。地域の住民との交流も持つことができたが、伊方原発が中央構造線という大断層地域にあることへの不安をはじめとして、自分たちの地域の地形から弱者は避難できない等の貴重な現場からの声を聞くことができた。 以上のように、最終年度に設定した大きな研究目標については、かなりの程度、それを達成できたと考えている。 さらに、当初の研究目標には設定していなかったが、近時の<原発訴訟についての民事訴訟廃止論>についても批判的に検討した。
|
Research Products
(2 results)