2013 Fiscal Year Research-status Report
労働組合の現代的意義と労働団体法理の再構築に関する実証的理論研究
Project/Area Number |
25380072
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
名古 道功 金沢大学, 法学系, 教授 (80172568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷河 亜希子 弘前大学, 人文学部, 准教授 (00431429)
豊川 義明 関西学院大学, 司法研究科, 教授 (40388731)
佐藤 飛鳥 東北工業大学, ライフデザイン学部, 准教授 (90513060)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 労働組合 / 労働法 / 労働者 / コミュニティ・ユニオン |
Research Abstract |
1 本年度は、①労働組合の実態の把握、②先行研究の理論的分析、③海外パイロット調査を計画していた。①では、東京及び大阪において注目すべき活動をしている労働組合の聞取り調査を実施した。調査組合は、ジャパンユニオン、東京東部労働組合、全港湾関西地本の3組合である。さらに、後述するミニシンポで4つの組合からも実情を聴取した。こうした調査を通じて明らかになったのは以下の諸点である。①日本では、企業別組合が大半であり、これが組合活動停滞の主因であるが、産別機能を発揮した取り組みをしている組合は、使用者団体と協約を締結し、労働条件改善に重要な役割を果たしている。②インターネットが組合活動に不可欠なツールになり、新たな活動領域拡大の可能性を秘めている。③労働条件などをめぐる多様な個別紛争に関する相談が多く、労働組合を必要とする客観的条件が存在している。 2 2月15日にミニシンポ「新しい労働組合組織・活動領域を求めて!」を開催した(参加者20名)。ここでは、5本の報告が行われ、明確となった課題は、①組織形態の改変の必要性、②賃上げなど本来の活動の活発化、③労働組合の魅力を高める活動領域の開拓などである。 3 文献研究は、名古及び豊川が主として労働法に関連して労働組合論の課題、伍賀が労働組合論の課題、そして長谷河がフランチャイズをめぐる法律問題を取り上げた。特に労働法理論では、企業別組合を前提にした理論が骨格を形成しており、この修正が課題である点を明らかにした。なお、予定していたアメリカパイロット調査は、佐藤の都合がつかず、翌年にくり越すことになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)上記の通り、労働組合の調査、文献研究はほぼ計画通りに進んでいる。日本において産業別組合として著名な全日本海員組合のヒアリング調査の打診を行ったが、組合の事情により調査できなかった点は予定外であった。ただし、全港湾労働組合の調査を実施し、またミニシンポで複数の組合との意見交換ができたので、この点をほぼカバーできた。 (2)アメリカのパイロット調査をできなかった点は、計画通りでなかったが、担当者がその準備を行っており、研究遂行にあたってそれほど大きな支障にはならないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1 次年度中心となるのは、ドイツ、アメリカ及び韓国での調査である。前年度の調査研究において明確になった課題に従い、関係団体でのヒアリングを実施する。 ①ドイツにおいては、労働者類似の者への労働協約の実情と課題、最近、活発な活動を展開しているパイロットや医師など専門職の労働組合への聴き取り調査のほか、研究機関(ドイツ経済社会研究所等)の訪問を予定している。②アメリカにおいては、特に緩やかなネットワーク組織を形成する労働団体や地域活動を重視する組織の実情を解明する。③韓国では、近年、非正規労働者の組織化が活発化し、また企業別から産別組織に変更する動きがあるので、これを中心に調査を行う。具体的には、現代自動車労働組合、民主労総、韓国労働組合総連盟などである。海外調査を通じて、日本における対抗的労使関係の構想や労働者類似の者の法的取扱いなど、多くの示唆が得られると予想される。 2 このほかに、多様な組合活動を行っている労働組合の調査を継続し、研究上有益な成果を得る。また、理論研究を継続し、広義の労働団体法理の基礎理論的研究に着手する。 3 研究会を2~3回開催するとともに、適宜、メールなどを用いて研究情報の交流を実施し、円滑な遂行を行う。なお、年度末の研究会では、中間総括を行い、最終年度に向けた研究方針を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
豊川が未使用となったのは、予定していた調査に参加できなかったため、及び退職を控えて緊急の仕事が入ったためである。 佐藤は、2013年度にはアメリカにおける労働組合調査(2ヶ所、各1週間)を計画していた。申請時には研究分担者となっておらず、2013年度当初に研究分担者として研究に参加したことから、今年度の研究内容は候補地の選定及びインタビュー調査に伴う労働組合最新情報についての基礎研究となった。候補地はニューヨーク及びシアトルに絞り込んで、訪米時期を2月と設定したが、同時期に勤務大学の校務でオーストラリアに学生を引率する事となり、今年度中の訪米調査は延期することとした。次年度8月から9月の期間を第1候補とし、今年度計画した労働組合2ヶ所、各1週間のインタビュー調査を実施する予定である。 佐藤は、今年度の繰り越し分を用いて次年度にアメリカ調査を実施する。 次年度においては、当初予定していた佐藤への配分額及びその他の繰越額を用いて、名古及び研究協力者である伍賀一道が韓国調査に参加するとともに、追加の国内調査を実施する。
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