2013 Fiscal Year Research-status Report
刑事手続における供述証拠の獲得・利用に対する法的規律
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25380086
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
池田 公博 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (70302643)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 捜査法 / 証拠法 / 取調べ / 自白 |
Research Abstract |
本研究は,取調べを含む供述獲得手法の適正化を図りつつ,その有効性を高める方策とともに、供述証拠の取扱いに妥当すべき法的規律の検討を目的とするものである。平成25年度においては,取調べのあり方や獲得供述の用い方の規律を内容とする立法に向けた議論の動向をも踏まえつつ,捜査法、証拠法の双方にまたがる問題について検討を加え,その成果の一部を論文として公表した。そのようなものとして,たとえば,一定の便宜供与を動機づけとして,自己の関与した他人の犯罪事実の解明につながる供述を促す捜査手法について,そのような手法は本来的に虚偽の供述が行われる危険性を高めるとされることに鑑み,供述獲得時には虚偽の混入を防ぎ,また獲得供述の証拠としての使用時にはその内容の真実性の的確な評価を担保する手続的な規律が求められる。こうした規律について,比較法的な考察も踏まえて,考えられる具体的な制度のありようを示すとともに,法制審議会において検討課題となっている制度の案について評価を行った。また,自白以外の証拠がなければ有罪にできないとする「補強法則」について,憲法上の重要な原則であるにもかかわらずその意義が様々に理解されていることに鑑み,これまでの議論を改めて整理し,本法則が,自白の過大評価に起因する誤判の回避に向けられたものであるとする理解を示したうえで,その趣旨の実現に向けた具体的な手続的規律のあり方の検討の必要を述べた。以上はいずれも,今後の刑事裁判においても供述が果たす役割が無視しえないものであることを踏まえて,その適切な取扱いのあり方について検討を加えたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
便宜供与を機縁とした供述を獲得する捜査手法に及ぼすべき規律について,比較法的知見も踏まえ総合的な検討を行い,具体的な制度のあり方についての提言を含む一定の見解を示すことができた。また,供述証拠の中でも重要性の認められる自白に妥当する法的規律のうち,補強法則など重要なものについて理論的な検討を加え,その意義を再確認する機会を得た。なお,特に後者については,その母法であるアメリカ合衆国の法制に関する議論の動向も踏まえて,より詳細な検討を加える必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度において展開した,捜査法上及び証拠法上の規律に関する理論面での検討を更に深めるため,文献調査,研究会での意見交換を継続するほか,比較法的調査・検討を行う。同時に,今年度は雑誌上に演習問題及びその解説を執筆する機会があることから,実際に生じうる具体的な問題をテーマに検討を行うことなどを通じて,実践的な運用に耐える形に議論を展開させることを目指す。さらに,以上の検討により得られた知見をもとに,構築すべき制度のあり方について具体的な検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画が継続中であるため。 研究を遂行するための文献調査のために書籍を購入するほか,研究に使用する機器等の維持・更新を必要に応じて実施するために,物品費を使用する。また研究会での意見交換や,比較法的調査・検討を行うため,旅費を使用する。同時に,調査結果を整理するために補助スタッフの助力を得る。
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