2015 Fiscal Year Research-status Report
国際漁業規制における予防アプローチの展開:日本の国内実施の実証的・理論的研究
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25380128
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
堀口 健夫 上智大学, 法学部, 教授 (10374175)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 予防アプローチ / 国際環境法 / 国際漁業法 / 国内漁業法 / 科学調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際法と我が国の国内との相互作用に着目しつつ、元来環境分野で提唱されるようになった予防アプローチが、国際漁業規制にいかに受容されるようになっているのか、またそのことが我が国の漁業法制にいかなる変容をもたらしつつあるのかを解明し、漁業法と環境法の交錯の一端を明らかにすることを目的とする。平成27年度は、前年度までの作業をふまえつつ、主に以下の研究を進めた。 第1に、前年度に引き続き、マグロ関係の漁業条約体制を中心に、国際平面での予防アプローチの採用状況やその具体化の調査を進めた。そこでは、公海漁業実施協定(1995年)で定められた予防アプローチ関連規定の具体的展開に着目し、各漁業条約体制の現状と問題の把握を継続的に進めている。その際には、関連文献や資料の調査とともに、9月に札幌で開催されたWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)北委員会への参加や、漁業法政策に詳しい研究者との意見交換、業界紙の講読等を通じて、文献等だけでは得られない実務上の論点の把握・検討にも努めている。 第2に、特に科学的知見と予防的な規制との関係に着目し、科学的知見を獲得するための活動(科学的調査)が予防アプローチによりいかに規律されるかという問題について、他の環境分野における規制の展開と対比しつつ、検討を進めている。この点に関する中間的成果の一部は、平成28年度に学会にて報告することが決定している。 第3に、日本の漁業法の特性や問題について、実務家や研究者との意見交換等も行いつつ、引き続き検討を進めている。漁業分野の場合、国際平面での予防アプローチに基づく決定の結果は当然国内法で受け止めているが、予防的な判断枠組自体は国内法にまで浸透していないとの暫定的知見を得ている。この点は、例えば判断枠組自体の国内法化が求められている海洋投棄分野とは対照的であり、さらに精緻な検討を引き続き進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の実施状況に対する国際的監督に関わる資料の検討のように、やや作業に時間を要している課題もないわけではないが、上述のように予定されている作業に概ね着手し、また遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は最終年度であり、成果の公表を中心に据えながら、知見や理論のさらなる精緻化に努めたいと考えている。最終的な成果は書籍としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
本研究に必要な文献が予想していたよりも多くなったことや、出張を検討していた海外開催の会議の内容をふまえ国内開催の関連会議により多く参加することに切り替えるなどしたため、当初の予定よりも物品費に比重をおいて支出することとなり、また若干の残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
科学的知見を得るための活動(調査漁業等)と予防アプローチとの関係といった論点も新たに射程に入れる必要が出てきたため、その関連文献の購入等にあてたいと考えている。また最終的に書籍として公表できる見通し等も立ったため、それらの準備に向けての追加的な事務作業の費用に充てることとする。
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