2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Precautionary Approach in International Fisheries Regulation
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25380128
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
堀口 健夫 上智大学, 法学部, 教授 (10374175)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 予防アプローチ / 国際環境法 / 国際漁業法 / 条約の国内実施 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、本来の研究期間を1年延長し、まず第1に、海洋生物資源保存条約(1958年)や国連海洋法条約(1982年)の漁業資源の保存(conserve)に関する諸規定に焦点を当て、その起草過程や学説の検討を主な手がかりに、国連海洋法条約が採択された1980年代頃までの保存義務の発展の検討を行った。その結果、例えば沿岸国が自国の排他的経済水域内で課せられている保存義務についても、むしろ他国との資源分配の文脈で最大漁獲可能量の設定等が義務づけられた面が強く、漁業資源の持続的管理の実現のための有効な規律は課題として残されていたことが確認された。そして、資源分配の問題と密接な関連をもつ形でかつて主張されたabstention principleとは異なり、近年提唱されるようになった予防アプローチはまさしく持続的管理のための法の不備に対処するものであって、保存に関する国連海洋法条約の関連規定の解釈においても適切に考慮されるべきことを明らかにした。 そのほか平成29年度においては、各地域漁業条約体制における予防アプローチをめぐる諸実践に関する調査を更新し、研究成果のさらなる洗練を図った。また平成30年より、本研究が主たる研究対象の1つとしてきた太平洋クロマグロの日本における管理が、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律(TAC法)の下におかれるようになり、予防アプローチの国内実施の観点からは、TAC法のさらなる検討が今後の重要な課題の1つとなることも確認された。 以上の研究成果もふまえた論文を現在執筆中であり、また本研究の成果の一部を含んだ学会報告も予定している。積極的な成果の公表に引き続き努めたいと考えている。
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