2014 Fiscal Year Research-status Report
「関係性の法」としての医事法原理・システムの構築-医療ネグレクト事案を端緒として
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25380135
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
保条 成宏 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (80252211)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 内なる優生思想 / 子どもの代理人 / 一時保護 / 児童相談所 / 児童福祉法 / 刑法 / 民法 / 総合的医事法 |
Outline of Annual Research Achievements |
連携研究者および研究協力者をメンバーとする「医療倫理と法」研究会を4回(分会を含む。6月:大阪、9月:大阪、12月:京都、2月:福岡)にわたり開催し、①親の「内なる優生思想」の形成メカニズムと実体、②医療におけるソーシャルワークの役割、③医療保障と子ども、④wrongful birthと医療ネグレクト、⑤「子どもの代理人」としての弁護士の役割、⑥医療ネグレクトへの一時保護による対応(児童福祉法33条の2との関係)、といった論点について検討を行った。 このうち、特に⑥について、研究代表者は、『年報医事法学 第29号』(2014年9月刊)掲載の論稿「小児患者の医療ネグレクトへの医事法的対応――『総合的医事法』の視点に基づく刑法と民事法・福祉法の協働」の着想を発展させ、特に児童福祉法に基づく一時保護による医療ネグレクトへの介入措置を肯定する行政解釈について批判的に検討し、その結果を『中京法学 第49巻第3・4合併号』(2015年3月刊)掲載の論稿「子どもの医療ネグレクトと一時保護による対応――刑法・民法・児童福祉法の協働による『総合的医事法』の観点に立脚して」としてとりまとめた。本稿においては、児童福祉法というやや特殊な法領域に位置する事象に関する考察を端緒としつつ、同法と民法、そしてさらには刑法との架橋を図り、「総合的医事法」の観点から医療ネグレクト事案に有効に対処しうるための法理論の構築を目指した。 また、医療ネグレクトに児童相談所が一時保護により介入した事案について、当該児童相談所およびこの介入後に治療を実施した医療機関に対し聞き取り調査を行い、事案の内容を解明するとともに、そこでの法的な問題点について分析・考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
特に児童福祉法に基づく一時保護による医療ネグレクトへの介入措置を肯定する行政解釈について批判的に検討することを通して、児童福祉法というやや特殊な法領域に位置する事象に関する考察を端緒としつつ、同法と民法、そしてさらには刑法との架橋を図り、「総合的医事法」の観点から医療ネグレクト事案に有効に対処しうるための法理論の構築に向けて端緒をつかむことができた。そして、この成果に係る研究報告書としての性格をもつ論稿「子どもの医療ネグレクトと一時保護による対応――刑法・民法・児童福祉法の協働による『総合的医事法』の観点に立脚して」を『中京法学 第49巻第3・4合併号』において公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
医療ネグレクトに児童相談所が一時保護により介入した事案について、当該児童相談所およびこの介入後に治療を実施した医療機関に対し2014年度に聞き取り調査を行った結果を踏まえ、医療ネグレクトという現象の核をなす子ども-親-医師間の「関係障害」の実相や、そこでの法的な問題点についてさらに深く究明するため、当該事案の追加調査を予定している。
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Causes of Carryover |
研究成果を公表するホームページの立ち上げを予定していたところ、その作業補助要員を確保することができず、立ち上げ作業を2015年度に見送ることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年度に研究成果を公表するホームページの立ち上げを予定していたところ、その作業補助要員を確保することができなかったため、2015年度に当該要員を確保するための費用として用いることを計画している。
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