2013 Fiscal Year Research-status Report
地中海両岸におけるポスト植民地期の政治変動と民衆-知識人関係
Project/Area Number |
25380171
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
大中 一彌 法政大学, 国際文化学部, 教授 (60434180)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 移民 / グローバル・イシュー / トランスナショナリズム / フランス / EU / 知識人 / 地中海 |
Research Abstract |
研究計画書に記載したとおり、法政大学出版局から上梓する予定となっている、移民史研究の古典であるジェラール・ノワリエル『フランスというるつぼ』の翻訳作業を進捗させることに、今年度の努力の過半を傾注した。特定の移民共同体を取り上げたモノグラフィが多い中で、アメリカなどにおける移民研究の進捗をも視野に入れながら、フランスの移民史に関して通史的・総合的な記述を行い、かつそうした記述を練り上げることにより移民社会論をめぐる新たな問題設定をも提示しようとする同書の内容は、学問的にきわめて重要な達成と評価しうるものであるが、いっぽうで、とりあげられるさまざまな歴史的事象に関する詳細な確認をも内容理解に際して要求するものであり、訳出にあたっては慎重な検討を加えている。国内にいながら可能な限りで海外の研究図書館を含めた他機関からの史資料収集を行うとともに、2014年2月にフランスに渡航し、翻訳作業をめぐる現地協力者の助けもあり、著者であるノワリエル氏に当面必要な質問を手交し、回答を得ることができた。現地ではまた、移民史博物館を訪問し、同書の公刊以降のフランスにおける、移民史の研究教育の進展を確認した(同館の展示方針などにもノワリエル氏以降の移民史研究の影響が色濃いようである)。さらに、このフランスへの渡航の際、パリ日本文化会館の関係者との打ち合わせをする機会も得た。同会館には、本研究課題が目指している、地中海両岸の知識人とのフェイス・トゥ・フェイスの交流を増大させる方向での企画書をすでに提出している。そして、この2014年2月の調査では、ブログに掲載したイタリア・ランペドゥーザ島への避難民漂着の問題について、著者であるオリヴィエ・ファヴィエ氏との情報交換も行った。また、2014年3月には、知識人における「パラダイム転換」という観念の使用について、研究会での報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
知識人論をテーマに掲げ、かつ地中海両岸という地域における人の移動および政治変動を背景とした本研究課題において、当面の課題はジェラール・ノワリエル『フランスというるつぼ』を日本語において入手可能にするということである。この点で、おおむね順調に研究が推移しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは『フランスというるつぼ』の上梓を目指す。しかる後に、ポスト植民地期の政治変動を念頭においた、地中海両岸における知識人の活動の展開の問題へと研究の力点を移す。
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