2017 Fiscal Year Annual Research Report
The Changing Relation between intellectuals and popular classes in recent political transformations of the mediterranean societies
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25380171
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
大中 一彌 法政大学, 国際文化学部, 教授 (60434180)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 移民 / フランス / トランスナショナル / 地中海 / アイデンティティ / 政治 / 国際研究者交流 / 知識人 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年に同時多発テロに襲われたフランスは、テロ後に施行した緊急事態令を、施行開始からほぼ2年となる2017年10月末に解除した。テロをめぐる言説は地中海両岸の関係をめぐる知識人の言説にも大きな影響を及ぼしている。2016年夏のブルキニ騒動に見られたような、多数派・少数派双方のアイデンティティ・ポリティクスの尖鋭化は、ナショナルな社会を単位としてしばしば語られてきた統合の概念について、それが可能であるための基本的な条件とはいかなるものであるのか問い直す気運をもたらした。こうした気運を受け、2017年に当選したマクロン大統領は、ライシテ(非宗教性)支持派から疑念をもって見られながらも、社会統合における宗教の役割を再評価しつつあるように見える。2017年度の実績では、本課題での活動で取り組んできた、ジェラール・ノワリエルの移民史論を分析することで、こうしたアクチュアルな問題に関する一定の見方を形づくることを試みた。ひとつには、ノワリエル『国民とは何か』の分析がある。2015年のテロ後の知識人の言説のひとつの特徴は、左右両派を問わず共和国の防衛の観点から、共同体主義(コミュノタリスム)を非難することであった。『国民とは何か』における、こうした型の言説の生成過程の分析を、一定程度明らかにすることができた。いまひとつは、移民史論を初めとする学問的な分析の社会的な役割に関する考察である。上述のような論争的な状況においてはしばしば、事実と規範を分離することが学問的な客観性の保証になるとする立場と、研究者は象牙の塔に閉じこもるべきでないとする主意主義的な立場が対立する。客観性を放擲して単なる活動家になるのでないとすると、いかなる研究実践が可能か。2017年度の実績では、法的なアイデンティティを主軸とするフランス社会の統合のあり方と関連付けて、この問題に検討を加えた。
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