2015 Fiscal Year Research-status Report
戦後の米欧関係におけるアメリカ広報文化政策の実態と影響の解明
Project/Area Number |
25380193
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齋藤 嘉臣 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (10402950)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 冷戦 / アメリカ化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度に進めた研究の目的は、アメリカニズムの特質と、その史的変遷について跡づけることであった。その際、歴代のアメリカ政府が発信したジャズにおけるアメリカニズムとは何か、それを受信する側がどのように理解したか、受信する側の論理と発信する側の論理との間に整合性はあるか、といった観点から、実証的研究を行った。 戦後、ヨーロッパがナチス支配から解放されると、戦前とは比較にならない規模で「アメリカ」が流入した。第二次世界大戦がもたらした荒廃とアメリカのプレゼンスのさらなる高まりは、必然的に一九世紀から続くヨーロッパの「アメリカ化」への反発を高めた(1940年代から80年代にかけての西欧は、反米主義の温床であった)。まず、47年に発表されたヨーロッパ復興計画(マーシャル・プラン)を受け入れた西欧で、アリカの政治的、経済的な影響力が高まった。また、東側の圧倒的な通常兵力を前に西欧諸国は、アメリカに西欧防衛への関与を求め、四九年の北大西洋条約によって安全保障上の関与を約束させた。このような構図からアメリカは「招かれた帝国」と呼ばれるが、その影響力は政治経済的、軍事的領域とあいまって文化的領域においても高まることとなる。だが、文化的なアメリカはある意味において、招かれざる帝国であった。積極的に反米主義に訴える層以外にも、アメリカ文化の流入に反発する人々の数は少なくなかった。 これらの背景を念頭に、アメリカ文化であると同時に、アメリカを超える機能を持ったのがジャズであった。ジャズは、フランスにおいて、アメリカ国内の人種問題を糾弾する反米的な機能を表出させた。 起源の地を超えて移ろうジャズの機能に着目することで、アメリカから発信されるアメリカ文化を受容する側の自発性が明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおよそ当初の計画通りに研究は進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、これまでの研究の成果をまとめ、一冊の本として刊行する予定である。
|
Causes of Carryover |
昨年度に出張計画を立てていたが、そのための予備調査を十分に行ってから出張を行った方が、その成果をいかせると判断し、今年度に延期したため。ただし、研究計画については当初予定どおり進めている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、史料調査のため海外出張を計画している。
|