2013 Fiscal Year Research-status Report
再考:米国の移民法―人・物の移動規制と国家の変容―
Project/Area Number |
25380205
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
加藤 洋子 日本大学, 国際関係学部, 教授 (00182345)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 人の移動 / アメリカ史 / 輸出規制 / 国際関係 / 情報技術革命 / 移民 / アメリカの対外戦略 / 国家の変容 |
Research Abstract |
平成25年度には、論文として「人の移動規制と州権―南北戦争前のアメリカを中心に―」(『国際関係研究』第34巻第1号)および単著『「人の移動」のアメリカ史―移動規制から読み解く国家基盤の形成と変容―』(彩流社)を出版した。 上記論文では、ニューヨーク州政府による移民規制を伝染病患者の規制を中心に分析したほか、州政府による人の移動規制における南部の特殊性についても扱った。 拙著では、情報技術革命下の国家の変容という観点から、人と物の移動を一体的にとらえ、アメリカを事例に分析した。本書には以下の新視点が組み込まれている。①輸出、外交、移民、教育、科学技術といった専門分野に分かれている現状に対し、アメリカの統治形態の基盤解明という観点から、それらを一体のものとして分析した。②人・物の移動規制を通じて、アメリカ史に流れる州権の独自性を英領植民地時代からの連続性のなかで捉え、また、連邦と州の今後のあり方について追究した。③アメリカのセンサスと人口、代議制民主主義との結びつきの分析も新しい。センサス導入時の画期的な点に注目したほか、センサスと(非合法移民を含む)人口がアメリカの政治にいかに組み込まれ、いかにアメリカの変容をもたらしてきているのかについても検討している。さらに、④国家基盤や人・物の移動規制にもたらす情報技術革命の影響を分析した。ヴィザ・マンティス論争をもとに、アメリカの対外戦略と人・物の移動規制の連動を追究しただけでなく、ヴィザやパスポート、個人認証の変化についても検討した。その他、⑤大航海時代、宗教改革、アメリカの領土拡大などに関するこれまでの一般的な描き方に対し、異なる見方を示し、また、⑥アメリカの特色を、スペイン領アメリカと英領アメリカの対比のなかでとらえた。⑦風と海流とアメリカ大陸への人の移動を、今日の連続性のなかに位置づけたが、これには東日本大震災の影響が大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度では、移民法に関するそれまでの筆者の研究に加えて、19世紀前半における人の移動規制について新たに検討した。また、拙著において、アメリカの移民法の『年次報告書』を用いて、19世紀後半からの移民法と移民政策についての分析を進めた。『年次報告書』からは、当時の政策形成者の視点が直に伝わってくる。第二次世界大戦前の人種に関する言及とそれに関わる政策形成、そして1965年の移民法による変化は、南北戦争後の公民権運動の歴史と重なり、第二次世界大戦前の植民地争奪から、戦後の植民地独立への過程とも重なる。また、国別割り当ての実施状況、その形骸化についても数字に明確に示された。 移民法に関しては、もとより分析対象となるものは多く、『年次報告書』自体も今後、さらに深く研究する必要がある。しかしながら、前掲の拙著のなかで移民法全般にわたって再検討を行っており、本研究の初年度の研究成果としては概ね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
筆者の本研究における一番の目的は、アメリカの国家としての基盤がいかに形成され、どのような特色を持っているのか、また、もし世界が「ポスト・ウェストファリア的方向」(ジョセフ・ナイ『国際紛争』有斐閣)に向かうとするならば、どのような要因でどのように変化するのか、といった問題を、人・物の移動規制を切り口にして分析することにある。 平成26年度において重点をおく時期と題材についても、いくつかの選択肢があるが、現時点では、『年次報告書』の更なる分析、あるいは、第二次世界大戦後のアメリカによる人・物の移動規制、とくに1990年法以降のアメリカの移民政策(なかでも情報技術革命との関係)の一段と深い分析が念頭にあがっている。いずれも既に筆者が研究をしてきている領域である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究支援者を雇用したかったが、研究室の室内で勤務することが求められているため、適切な人材を見つけることができなかった。 旅費に関しては、当該年度において本を出版し、執筆に専念したため、使用していない。 できれば人件費に使いたいが、その他、研究図書やOA関係での使用を予定している。
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