2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380220
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
及川 浩希 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (90468728)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 研究開発 / 企業間の技術的距離 / 経済成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
特許の技術分類に従った技術カテゴリー内での企業間の技術的な距離を新たに定義し、それに基づいた技術空間上の企業の分布を捉えた。利用しているのはアメリカ特許庁のデータだが、アメリカで特許が認可された企業は全て含まれており、世界的な技術開発の趨勢を捉えられていると考えられる。 推計された技術空間上の企業分布は、企業間の技術的な距離の平均が過去30年ほどのあいだ上昇トレンド持っていることが見いだされる。それと同時に、技術カテゴリー内での多極化(polarization)の度合いが高まってきていることも見出された。これらの分布的特長と、集計された企業の研究開発量(後の引用情報を用いて質的調整を施した特許申請数で計測)がどのような関係を持っているかを推計した。これは、多極度の上昇が技術グループ間競争の強度を高めている可能性を念頭に置いての推計である。結果、まず第一に、企業規模や知識ストックをコントロールした上で、多極度は集計されたイノベーション量にマイナスの効果を持つことが見出された。しかし、第二に、多極度を要素分解して、技術グループ間競争をよりダイレクトに検証した結果、技術グループ間競争が比較的激しいとみなされる時期に限定すれば、多極度がイノベーションにポジティブな影響をもたらすことが見出されている。 以上の実証結果を踏まえて、特許申請と企業間の技術的距離を取り入れた成長理論のモデルを構築中である。技術的な距離の近さが、ライバル特許のブロックに成功する可能性を取り入れたモデルにより、企業のイノベーションのインセンティブが技術空間上の企業分布の影響を受け、その経路を通じて経済成長率を変化させる、というのが理論的骨子である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究プロジェクト全体のベースとなる実証研究部分が順調に進んでおり、理論モデルの構築もある程度の形を見せているので、全体として概ね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
実証研究:実証研究部分の大勢は出来ているが、より議論を深める余地があると考えている。具体的には、(1)技術カテゴリーの分類方法による影響の検討(2桁分類を使用しているが、3桁分類コードを利用した場合に結果が変わるかどうか)、(2)技術カテゴリー別での多極度の分解とその影響、である。これらは、すぐにもとりかかることができる。また、実証研究で得られた成果は、国内外で学会報告の予定がある。
理論研究:理論研究部分はシンプルな概要は形作られているが、まだ本格的な理論分析に耐えうるモデルにはなっていない。そのため、今年度中の研究の中心は、理論モデルの構築となる。モデルの素地は、Aghionらによる"Competition and Growth"の一連の研究と、Cozziらによる特許訴訟を内生的成長の議論に取り入れた理論である。この理論モデルの構築とシミュレーションは、今年度中に遂行可能と考えている。
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Causes of Carryover |
論文の完成状況を鑑み、学会等での報告のタイミングを年度をまたいで繰り延べたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
プロジェクト遂行のための資料・物品購入、学会報告の旅費、論文の英文校正等にあてる。
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Research Products
(2 results)