2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25380220
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
及川 浩希 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (90468728)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 技術的多極化 / 技術グループ間競争 / 特許引用重複 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、企業の技術空間上のネットワーク構造を把握する一手段として、特許引用の重複度合いを計測し、その時系列上の変化と企業のイノベーション成果への影響を分析した。特に焦点を当てたのは、企業群による技術グループの形成状況である。技術グループが存在すると、個々の企業間競争だけでなく、グループ間での競争(業界標準をめぐる競争がその典型例である)が研究開発投資への誘因として追加される。したがって、技術グループの形成があるかどうかは、全体の研究開発努力を増加させ、成果としての特許出願数を増やす傾向が生まれることが予想される。本研究では、米国特許商標庁のデータを用い、1990年以前は予想と整合的な結果が得られるが、以後では逆転し、技術グループ間競争が全体的なイノベーション成果にマイナスに働いてしまっていることを示した。 1990年前後の構造変化の原因は、アメリカで1980年代を通じて浸透したプロ・パテント政策への転換が最も重要な要因として考えられる。行き過ぎたプロ・パテント政策によって技術グループ間競争の存在が研究開発よりもむしろ特許訴訟を中心とするレント・シーキング活動の誘因を高めることにより、従来ポジティブだった影響がネガティブに逆転したものと考えることができ、制度的な要因で本来のグループ間競争インセンティブが歪められていると結論した。これは、イノベーションを効率的に引き出す特許制度を考える上で、新しい知見となる。 技術グループの形成は、Esteban and Ray (Econometrica, 1994)等の多極性(polarization)のメジャーを用いることで統計的に捉えた。また、技術グループ間競争を導入した研究開発競争の理論モデルを構築して、多極性やその他の企業分布の特徴と研究開発インセンティブの関係を導いている。
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Research Products
(5 results)