2014 Fiscal Year Research-status Report
経済学の限界と意義:21世紀の方法論と経済学理論の位置付けに向けて
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25380227
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浦井 憲 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (00203597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 惠行 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60216869)
葛城 政明 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60273736)
堂目 卓生 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (70202207)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(英国) / 経済学方法論 / 数理経済学会 / 貨幣 / 一般均衡理論 / 動学的経済理論 / 経済学と倫理 / 経済学の哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は (1) 歴史的・データ的アプローチ、(2) 方法論的・学説史的アプローチ、(3) 純粋理論的アプローチ、(4) 現代社会の事例研究を柱として、平成25年度から3年間にわたり遂行される。26年度は展開期であり、初年度と最終年度を橋渡しする。 (I-a) 定例勉強会: 経済学方法論およびそのための哲学、経済史、人類学からの文献・データおよび知識の共有を目的として月一回(各月第三水曜日)行われた。主な題材は、批判的実在論の『超越論的 transcendental』に関する批判、Migration and Translation of Social Science(文化人類学者との共同研究)、経済サイバネティクス、経済学理論における貨幣、J.R. Searl (2009), Making the social world(近年のヨーロッパにおける社会存在論の展開)、その他。 (I-b) 定期ワークショップ: 平成26年度、夏季と春季に大阪大学でのワークショップ(数理経済学会方法論部会と共催の近畿地区ジョイントセミナー)を開催した。ゲスト報告は、オーストリア学派の専門家である塘茂樹氏による「狂騒の1920年代におけるハイエク」など。各季において哲学、文学、社会学、医学、工学、そして経済理論家と多分野の専門家を交えて、分野の枠を越えたテーマが共有され、議論された。 (I-c) 次年度以降の研究における「方法論」の確定: 前年度の「実在論」を中心とした哲学的基礎に乗り、今年度はサールの社会存在論、社会科学における Migration の問題、動学的問題における貨幣といった具体的な足場が構築され、研究代表者ならびに分担者間で共有された。次年度最終年に向け、書籍が準備されている。また同様の研究を行う英国のグループ(ケンブリッジ大学)には分担者の一人が参加し、密接に連絡をとっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は研究代表者である浦井憲(大阪大学:理論経済学)を中心として、研究分担者である堂目卓生(大阪大学:学説史・思想)、竹内惠行(大阪大学:統計・歴史)、葛城政明(大阪大学:方法論・哲学)の4名を中心に遂行されている。本研究の目標に挙げた4つの柱 (1) 歴史的・データ的アプローチ、(2) 方法論的・学説史的アプローチ、(3) 純粋理論的アプローチ、(4) 現代社会の事例研究、は本研究の性質上それぞれ切り離すことのできない互いに補完的な役割を持つものであるが、26年度においては前年の哲学的基礎の上に立って、純粋理論的には貨幣と動学なアプローチ、また方法論的にはヨーロッパでの社会存在論との合流、文化人類学者との研究の連携など、基礎の上に立って具体化した研究方向が構築された。これらが次年度において結実するところを待つ形となり、導入期の前年、最終年である次年度の橋渡しとして、展開期の今年度、我々の研究がおおむね順調に進展しているとの判断を下すところである。 次年度は上記枠組みに沿った研究の完成に向け、論文、書籍の形でのまとめを行うとともに、新しい形での一般均衡理論分野での話題提供、理論の一般化、種々データ・事例研究との合流、等を目指して、活発な研究会の開催、ワークショップ、学会の研究部会が積み重ねられる。 なお、具体的な勉強会(概要にて上述した (1-a))、ワークショップの開催(同じく (1-b))、海外の研究者グループとの交流(同じく (1-c))について、これらが当初の計画通り順調に進展していることは、上記に報告した通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は展開期にあたり、前年において構築された基礎、とりわけ哲学的基礎の上に、具体的な純粋理論的(貨幣と動学を中心に据えた)、また方法論的(サールの社会存在論との合流ならびに文化人類学的な研究との協同)といった基礎が構築された。 次年度はこれらの具体的方針に沿った、新しい形での一般均衡理論分野での話題の整理、理論の拡張、そして経済学の方法論の新基軸構築を目指す。そのために、他分野の研究者との交流、種々データ・事例研究の一層の充実が、活発な研究会の開催、ワークショップ、学会の研究部会等を通じて、積み重ねられる。 最終年度である次年度、我々の目標は、論文ならびに書籍の形でのとしての初年度の以来の結果の結実である。経済学方法論の新機軸の構築を目論む書籍の協同執筆。一般均衡分野、とりわけ「貨幣と動学」の問題に向けた、論文集を企画する。具体的な勉強会とワークショップの開催は、25年度・26年度と同様に、また一層の活発化を目指して27年度も継続される。 上述した書籍ならびに論文集の企画は、前年から「目標」としてきたものであり、最終年での結実に向けて周到な準備がなされている。海外の研究者グループとの交流、情報交換についても、今年度と同様、活発に行われる。分担者の一人は、今年度秋のヨーロッパでの国際学会の報告に基づき、次年度もまた一層 CSOG(ケンブリッジ社会存在論研究グループ)との交流ならびに連絡を密なものとする。前年度は数理経済学会が国際学会として開催され、研究代表者を含む論文が報告されており、今年度はそれらの論文の完成も見込まれる。加えて27年度は、当該研究のまとめの上に、なお以降に向けた研究計画の策定を試みたい。これについては「経済学における哲学的前提」といったテーマをもって、「貨幣」等を軸に、事例研究や質的、量的なデータに基づくアプローチまでを含めたものを企画している。
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Causes of Carryover |
年度末、3月27日にワークショップを開催しており、その際の講演者その他への旅費および謝金の合計額が間際まで確定せず、また参加研究者への助言謝金については他に候補者もあり、結果的には来ていただけなかった方もおられるなど、幾分余裕を見て支出決定をせねばならなかったため、結果的には同額が次年度への繰り越しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は最終年度でもあり、定例ワークショップおよび勉強会には昨年、一昨年に増して多くの研究者を招きたく、そうした際の旅費、謝金としたいので、そちらのより一層の充実を図って充当したい。
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Research Products
(7 results)