2013 Fiscal Year Research-status Report
日本企業の市民社会化の研究―経営の共同体モデルから市民社会モデルへ
Project/Area Number |
25380459
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
石川 公彦 明治大学, 経営学部, 助教 (00440173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 一夫 一橋大学, 社会(科)学研究科, 教授(契約職員) (30114953)
佐々木 貴雄 東京福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (30433634)
戸室 健作 山形大学, 人文学部, 准教授 (60542024)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 経営学 / 日本的経営 / 企業の社会的責任(CSR) / 監査役制度 / 経営労務監査 / グローバル枠組み協定 / 企業の健康増進活動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本企業における経営スタイルが、伝統的な共同体モデルから市民社会モデル(≒脱共同体モデル)へ変化しつつある痕跡を拾い上げ、その意義を検討することにある。企業のウチとソトとを分ける「垣根」が溶けるように市民社会化が進んでいる状況を、複数の事例研究を重ねることで明らかにする。また同時に理論検討として、CSRを分析の糸口に用い、日本企業と社会との相互関係までを明らかにする。 事例研究の実施計画では、1.監査役制度、2.経営労務監査、3.グローバル枠組み協定、4.健康増進活動という4つのフィールドから代表的事例を抽出し、日本企業の市民社会化とその程度を事例実証的に明らかにすることを到達点としている。初年の2013年度は、資料の収集と整理に専念し、それを研究課題と照合して、追加収集すべき資料の検討を行うとしていた。実際の成果は、4つのフィールドで代表的な事例選択を行い、文書資料の収集と整理および関係者への聞き取り調査を進め、おおむね目標水準を達成した。調査研究の進捗状況や分析の方向性については、社会政策学会における雇用・社会保障の連携部会や研究会で検討した。なお、4.健康増進活動については、総合健康保険の現状に関する概要と考察をまとめて公刊した。 また、理論検討の実施計画では、CSRを糸口として、日本企業と社会との相互関係を分析し、企業のウチとソトの「垣根」が脆弱化あるいは希薄化した理由や意義を明らかにすることを到達点としている。2013年度は、国内外の文献調査によって論点整理を行うとしていた。実際の成果は、CSR研究の専門家を招聘してCSRの研究会を開催するとともに、文献研究によって、日本・米国・欧州のCSRの起源と経緯を比較分析し、地域ごとのCSRの特異性の把握に努めた。その一部は、社会政策学会における雇用・社会保障の連携部会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において、初年の2013年度の目標は次のように定めていた。まず、事例研究については、資料収集と整理に専念し、収集した資料と研究課題とを照合して、追加収集すべき資料の検討をすることとしていた。時間の許す限り、文書資料の追加収集と聞き取り調査を重ねて行う必要があるものの、全体的な事実発見および研究課題の検討は、当初の計画どおりに進んでいる。 また、理論研究については、2013年度は、国内外の文献調査によって論点整理を行うこととしていた。これについては、当初見込んでいた以上に、日・米・欧の比較分析が進み、それぞれの地域におけるCSRの特徴を、まだ十分とはいえないが、かなりの程度まで析出できた。 事例研究と理論研究の両方とも、アウトプットは2年目以降を中心に行うものと定めており、初年の2013年度における達成度はおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
事例研究に関しては、第一次資料の収集を引き続き十分に行う。CSRの理論検討についても、実際の企業担当者へ聞き取り調査を行い、理論と実践の場との乖離が生じないよう留意する。 また、これまで研究協力者として参加していた3名が専任職に就職したことにともない、2014年度より研究分担者に変更することとなった。この3名は東京から、それぞれ、青森、広島、沖縄へと赴任するため、研究チームの再編成が必要となった。そこで、これまでチームで取り組んできた研究体制を、事例単位で各人が引き継ぐこととした。その結果、グローバル枠組み協定の研究に余剰メンバーが生じることとなったため、対象事例へのアクセスの利便性などを勘案しつつ、新たな事例フィールドを設定することとした。すなわち、「公務労働における非正規労働者の労働条件向上の取り組み」に関する事例研究である。公契約条例という、いわば「ソト」からの論理に依拠しながら、正規労働者と非正規労働者が連携して労働条件の向上運動を展開している事例を追う。これにより、共同体的な「ウチ」側の正規労働者と、「ソト」に位置する非正規労働者との一元化、つまり、市民社会化の一断面をとらえようとするものである。当然、公務労働の場は民間の企業経営の場とは別物であるが、そこには伝統的な日本的経営の特徴が民間企業以上に色濃く維持されてきたことも事実である。したがって、市民社会化モデルへの変化を公務労働の場から明らかにすることも可能であり、また、市民社会化の流れを多角的に捉えることができると判断した。 2014年度からはアウトプットに主軸を移し、社会政策学会における雇用・社会保障の連携部会を中心として、公開研究会や分科会を企画し、成果を広く報告するよう心掛ける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究協力者として研究に従事していた4名のうち2名が、2013年度の途中で他大学の専任職に就職し、遠隔地へ赴任した。そのため、2013年度中に、当該研究者たちの研究費として計上していた予算残額を、翌2014年度の研究分担者の研究費として繰り越すこととした。また、この後さらにもう1名の研究協力者の異動が予定されたため、打ち合わせや研究会に参加するための旅費の増加など、不測の事態に備えて、研究代表者が自身の直接経費の使用を抑えた。これらの事情を理由として、次年度使用額が生じた。 2013年度の途中で所属大学を移った2名に対して、未消化であった予算額分を2014年度に分配する。この予算について当該2名は、当初の計画に基づいて、物品購入、報告や打ち合わせにかかる旅費、その他の複写費などとして使用する。研究代表者も当初の予定に基づいて、昨年度に購入を控えた書籍等の物品費などに充当する。
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Research Products
(2 results)