2013 Fiscal Year Research-status Report
起業「活動」と起業「態度」の関係性についての地域間比較分析
Project/Area Number |
25380539
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
高橋 徳行 武蔵大学, 経済学部, 教授 (60366838)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本庄 裕司 中央大学, 商学部, 教授 (00328030)
安田 武彦 東洋大学, 経済学部, 教授 (30303481)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アントレプレナーシップ / 開業率 / 地域経済 / 地域間比較分析 |
Research Abstract |
第1には、2013年のグローバルアントレプレナーシップモニター(以下、GEM)調査によって得られた、新たな都道府県別のデータ(2,000件)を、予備調査で行ったデータ(2008-2012年)に加えて統合することによって、ベースとなる分析対象データを充実させた。 第2には、それに伴い、官庁統計では開業率が高いが、GEM調査ではサンプル数が少なかった沖縄県に関するデータを、GEM調査と同じ手法、つまり固定電話を使ったRDD(Random Digit Dialing:乱数番号法)によって収集した。これによって、特に沖縄県の起業態度に関する情報の充実を図ることができた。 第3には、2013年のGEM調査と科研予算を使って収集したデータを統合したものを分析対象データとして、比較対象とすべき地域を確定するための分析作業を行った。科研申請前の予備調査では、東京都、東京・名古屋・大阪の大都市圏、そして地方圏(北海道、秋田県などの地方の10道県)の3つに分けて分析したが、この分類によって得られた結果を踏まえて、他の組み合わせをいくつか試すことによって、本調査にとって最も適した比較対象地域を選ぶための分析作業を進めた。 第4には、有力な分析対象候補である沖縄県のデータ等を収集した。すなわち、官庁統計による女性の開業率の高さと離婚率、いわゆるシングルマザーの割合の高さ、そして女性に特化した開業支援制度などである。これらは、GEM調査でカバーできない説明変数を求めるための予備調査という位置付けで行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に推移している理由は次の3つである。 第1には、2013年のGEM調査を予定通りに実施し、本研究にとって重要な追加データとして2000件を入手でき、さらに、それを受けて、GEM調査ではサンプル数の少なかった沖縄県のデータを充実させることができたことである。 第2には、都道府県間の起業態度と起業活動の違いを説明する変数として何を採用すべきかについての分析が進展したことである。この成果の一部は、沖縄県の定量分析と定性分析を通して得られたものである。今の段階では仮説レベルではあるが、女性の開業率の違い、そしてその背景にある社会進出の程度の違いが、男女を集計した全体の起業活動や起業態度に影響を与えている可能性が高いことが明らかになってきた。その他の要因としては、大学数(県内進学率)、失業率、県民所得などが候補にあがっている。 第3には、官庁データとGEM調査の整合性について、都道府県単位で検証作業を実施したことである。これは、分析対象地域を最終的にどの都道府県と、どの都道府県にするかを決定するための分析の一環として行った。 以上が、本研究が順調に推移している理由であるが、すべての都道府県において、官庁データとGEM調査が整合しているのではないことも、同時に明らかになってきた。ただし、これは官庁データに比べて、GEM調査のデータ数が少ない(100件以下の県など)ことも要因として考えられるので、さらに検証作業を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
第1には、分析対象地域と分析モデルの確定である。科研申請前の予備調査と25年度に実施した調査を踏まえ、引き続き官庁データとGEM調査の分析を行った後、都道府県別の利用可能データを精査し、分析モデルの確立を同時平行で実施する。具体的には、一つには、起業活動指数と起業態度指数の比較分析を、異なった都道府県単位で実施することであり、もう一つは、異なった説明変数の組み合わせによる分析モデルを検証し、それらの分析モデルの有効性を比較検討することである。 第2には、都道府県単位で実施されている起業態度に働きかける上で有効な政策やプログラムを調査することである。これは、定量的な分析結果を補完し、また今後の創業支援策を考える上で、重要な情報である。 第3には、「第1」と「第2」の調査活動を支援するための活動として、この分野における最新の研究成果を整理することである。特に、起業態度に働きかける上で、欧州で一定の成果を上げている学生向けのプログラム(MINI COMPANY)等と、地域単位の創業支援策として成果を上げているクラスター形成のプログラムなどについて詳しく調査する。 以上の3点を重点的に行う一方で、課題として考えなければいけないこととしては、追加サンプル数の確保にかかる問題である。GEM調査と同じ方法、すなわち、RDD(Random Digit Dialing:乱数番号法)による方法では、1件のサンプルを集めるために、数千円かかることが明らかになった。これは、対象地域を絞り込めば絞り込むほど、電話をかける対象数が少なくなり、その結果、調査対象者に出会う確率が減少するためである。そのため、GEMと異なった方法による追加データの収集も視野に入れて、今後の調査を進めて行きたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分析対象となる都道府県を確定するための作業が継続中であるため、現地調査を実施する地域が確定せず、その結果、旅費に予定していた予算をまったく使用しなかったためである。 25年度に引き続き、26年度も分析対象地域の確定作業を継続する。26年度中には、確定する予定のため、それを踏まえて、現地調査の準備を進めるが、場合によっては、定量分析をほぼ完了した後に、現地調査を実施する可能性も残されている。その場合は、旅費の予算を使用するのは、27年度になる。
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