2014 Fiscal Year Research-status Report
25年後の戦友会のフィールドワーク:戦争体験の等身大の意味づけに関する実証的研究
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25380636
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
溝部 明男 金沢大学, 人間科学系, 教授 (90127142)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 戦友会 / 従軍体験の意味づけ / 戦没兵士の慰霊 / 物語 / 認知的不協和の理論 / 従軍体験の2側面 / 状況の定義 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 研究資料の整理と作成:1980年から蓄積した資料を整理し、フィールド・ノートをワードに入力する作業を進めた。 2概念枠組みの検討 (1)「基本前提」:(a)体験の言語化の核となる事実は変化しないと考えられるが、しかし、(b)体験の言語化はそのつど作りだされるものであるから、体験は表現されるたびに変化する側面を含むと前提する。 (2)「従軍体験の2側面」:従軍体験は、潜在的に、無残な側面と誇らかな側面の2つの側面をもつ。どの側面が表面化するかは、行為者とその状況によって異なる。 (3)戦友会の人々が、出征・敗戦後・現在、何を考えていたか(いるか)を把握するために、「状況と義務に関する認識」という概念を用いる。この概念によって、個人レベルの認識と集合体レベルの認識との一致あるいはズレを記述する。 (4)「物語」という視点:戦友会とは、従軍体験に関する「物語」を、当事者の立場からつくりだす集団である。「物語」の特徴は、筋(プロット)をもつ、出来事に意味が付与されている、人々に共有される、語るひとが納得している、という4点である。 (5)戦友会において語られる物語には、2つの焦点がある。「出征」と「戦死者の慰霊」である。 (6)「出征」に関しては、国を守るために、戦うことは当然の義務であった、という物語が一貫して引き継がれている。「戦死者の慰霊」に関しては、戦友会独自の慰霊碑が建立され、新しい物語が作り出されている。2005年の会合においては、「犠牲」という概念が前面に出る語りが観察された。 (7)戦友会活動を説明するために、「認知的不協和の理論」(または「サンク・コスト効果」)が使える。 上記の概念枠組みを検討するために、学会報告と公開講義(1回)を行った。 3 海外調査:中国上海における戦死者の慰霊と従軍兵士の処遇について、研究協力者に現地調査を依頼した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者溝部の諸事情により、外国出張が難しくなっているので、国内の戦友会と比較するための海外調査が十分に実施できているとは言い難いため。
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Strategy for Future Research Activity |
海外調査のために、研究協力者をあらたに1名増やす予定である。平成27年度は、研究の最終年度にあたるため、報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
健康上の理由および家庭の事情により、研究代表者が海外出張を行えなかったために、旅費の残額が多めに生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究協力者に海外調査を依頼して、情報収集を進める。平成27年度は研究の最終年度にあたるため、報告書の作成費用にあてる。
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Research Products
(2 results)