2015 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本の自殺の歴史社会学的探究:意味論および医療的、経済的、法的システムの検討
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25380652
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
貞包 英之 山形大学, 基盤教育院, 准教授 (20509666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野上 元 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (50350187)
元森 絵里子 明治学院大学, 社会学部, 准教授 (60549137)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自殺予防 / 過労自殺 / いじめ自殺 / 厭世自殺 / 生命保険 / 自殺のポストベンション / 生権力の変容 / 歴史社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究の最終年度として、おもにこれまでの研究成果を検討し、それを拡充することに尽力した。具体的には第一に、20世紀後半における自殺動機の変化にかんして、精神科医の社会的な地位の変容という観点から考察した。それによって、20世紀に厭世自殺が消失していくが、それには「精神障害」という新たな疾病観の登場と、それを支える制度的な拡充が深く絡んでいたことがあきらかにされた。 第二に、子どもの自殺にかかわる学校や家族の関わりにかんして、2015年度に新たに生じたケースをデータに組入れつつ考察した。子どもの自殺が問題になる時、現在では学校、家族の責任が大きく取り上げられるが、それが歴史的にいかなる仕方で配分されてきたのかをとくに法的に検討したのである。 第三に、自殺の事後措置の変容という観点から、自殺をそもそも発見し記録する主体の現在のあり方について分析した。自殺に対する事後措置=ポストベンションにかんしては、自殺者にかかわる人びとの心理的な問題が強調されることが多いが、まず自殺がいかに発見され記録されていくかを、出発点として問題にしなければならない。そのために、具体的な事例にかんして、マスコミの対応や警察の対応に焦点を絞り分析された。 加えて、以上の個々の分析をデータとして、20世紀、21世紀の自殺が社会の変化といかに結びつき変容しているかが最終的に検討された。結論としてあきらかになったのは、生権力をいわば逆用しつつ、むしろ人の死をめぐって動く新たなタイプの権力の拡充が近年見られることである。現代社会では自殺がますます社会問題化されつつ、マネーや権力の動きの中心となっているのであり、そのことを歴史的に記述し研究の総体をまとめる書籍の執筆を行った。
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Research Products
(6 results)