2013 Fiscal Year Research-status Report
日豪におけるエスニック・マイノリティ向け社会政策の社会学的比較研究
Project/Area Number |
25380695
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
塩原 良和 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (80411693)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 多文化主義 / エスニシティ / 社会学 / 社会政策 / 移住者 / 先住民族 |
Research Abstract |
本研究では、オーストラリアと日本を事例とした実証的研究によって得られたデータに基づき、現代先進諸国における移住者と先住民族に対する社会政策の双方を包含する「エスニック・マイノリティ向け社会政策」分析の理論的枠組みの構築を試みる。 平成25年度には、以下のような研究を行った。まず2013年7月から8月にかけて約20日間、および2014年3月に約10日間、オーストラリアにおける現地調査を実施した。現地調査では、国公立図書館での文書資料収集、現地研究者との研究交流や大学で開催されたセミナーへの出席、移民支援団体職員や現地住民への聞き取り調査を実施した。オーストラリアでの政治情勢の変化を受けて、当初の計画を若干変更して時宜に適ったデータ収集を行った。 これらの調査と並行して、日本社会における外国人住民・先住民族に関する調査を行った。今年度は予定を変更し、琉球・沖縄における先住民族運動・自己決定権の主張の動向に焦点を当ててデータを収集した。そしてオーストラリアと日本での調査の知見を比較検討することで、重要な理論的示唆を得た。 この他、諸外国の事例についての知識を深めるためにゲスト講師を招聘し、研究交流を行った。これらの研究成果をもとに、国際シンポジウムでの英語での報告を含む複数回の研究発表を行った。また本研究に関連する論文・図書も複数点公刊した。以上のように、政治・社会情勢の変化のなかで若干の計画の変更はあったものの、概ね順調に研究を遂行することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に計画していたオーストラリア調査は、現地での状況の変化を考慮して内容を一部変更したものの、エスニック・マイノリティ向け社会政策の調査という本研究の企図に沿った有意義な成果を質量ともに得ることができた。日本国内の調査に関しては、当初計画していた北海道での調査は諸事情により次年度以降に見送ったものの、琉球・沖縄における先住民族運動・自己決定権の主張について調査し、興味深い成果を得ることができた(研究費が不足したため、自費による沖縄現地調査も実施した)。また初年度であるにもかかわらず、研究報告や論文執筆といったかたちで研究成果の公開を進めることができ、それらをつうじて次年度以降の研究に向けた理論的命題の練り直しを行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年にオーストラリアにおいて政権交代があったこともあり、エスニック・マイノリティ向け社会政策にも変化が生じつつある。それに伴い、本研究における現地調査の内容にも若干の変更を加える必要がある。また研究の進展に伴い、焦点をあてるべき調査対象も微修正する必要がでてきている。次年度以降は、オーストラリアにおける庇護申請者問題の動向、および移民コミュニティにおける社会政策の変容に従来以上に注目して研究していく。ただしエスニック・マイノリティ向け社会政策の日豪比較研究という根本的な研究目的に変更はなく、むしろ、当初念頭になかったさまざまな事例を研究に取り込むことで、当初の想定を超えた充実した理論構築を行うことが期待できる。
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