2013 Fiscal Year Research-status Report
婦人保護施設の支援における「ケアとコントロール」機能と 支援者の倫理的ジレンマ
Project/Area Number |
25380750
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
児島 亜紀子 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (40298401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 博幸 大阪府立大学, 人間社会学部, 准教授 (30288500)
山中 京子 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (50336814)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 婦人保護施設 / ケア / コントロール / ジェンダー / 支援 |
Research Abstract |
昨年度は婦人保護施設の支援員5名に面接を行い、職員の支援観および支援におけるコントロールの実態、支援におけるジレンマ等を中心に聞き取った。その結果、売春に対する道徳観には、職員間でかなりの差異があることが明らかになった。売春を「道徳的に望ましくないもの」と捉える職員もいる一方、これをセックス・ワークのひとつとし、「積極的に勧めはしないが、それを行うことには致し方ない面がある」「健やかに(セックス・ワークを)行っている者もいる」と捉える職員もおり、後者の立場から「婦人保護施設につながる手前で、セックスワーカーのニーズに合った支援を行うことが重要」という意見も見られ、婦人保護施設職員が必ずしも旧来のステレオタイプ的な売春観を持っているわけではないことが明らかになった。入所者へのコントロールについては、中堅の職員から、DV防止法施行前と後で、職員の意識が大きく変化し、入所者へのコントロールが緩和されたという語りを得た。このことは、DV防止法によって、婦人保護施設に入所する要保護女子像が「ジェンダー秩序から何らかの形で逸脱した女性」から、「男性中心主義の社会における被害者としての女性」に大きくシフトしたことを示している。一方で、支援におけるジレンマに関しては、業務多忙のため日々の実践の振り返りが充分にできないこと、近年の婦人保護事業をめぐる政策サイドからの圧力(人員の削減等)によって適切な支援がしにくくなっていることなどが挙げられ、ケアとコントロールをめぐるジレンマにつながるような語りが充分に得られなかった。今後、より深く掘り下げたインタビューの実施が必要であると思う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
婦人保護施設で支援に携わる職員からのインタビューを実施することができた。そこから、職員の売春観、「保護」と「更生」(あるいはケアとコントロール)の捉え方、コントロールの実態、職員は支援にあたってどのような「困りごと」を実感しているのか、そのような困りごとが生じた際に、職員はどのようなやり方で解決しようとしているのかを聞き取ることができ、婦人保護施設の職員が有する支援観、支援におけるコントロール機能の位置づけをある程度明らかにし得た。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き婦人保護施設職員にインタビューを実施し、職員の入所者に対する思い、支援観、売春に対する考え等を聞き取る。また、施設においてケアとコントロールがどのように行われているのか、またケアとコントロールをめぐるジレンマの有無について聞き取り、それらをジェンダーの視点から分析していく。また、婦人保護、女性福祉関連の文献をさらに読み進め、施設入所した女性に対してなされるケアとコントロールを捉える分析枠組の精緻化に努める。
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