2014 Fiscal Year Research-status Report
婦人保護施設の支援における「ケアとコントロール」機能と 支援者の倫理的ジレンマ
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25380750
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
児島 亜紀子 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (40298401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 博幸 大阪府立大学, 人間社会学部, 准教授 (30288500)
山中 京子 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (50336814)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ソーシャルワーク / ジェンダー / 婦人保護施設 / ケア / コントロール |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度には、婦人保護施設の職員6名に対し、インタビューを実施した。前年度と同様、支援における「ケア」と「コントロール」の実態を明らかにするため、①「保護更生」に関する職員の意識、加えて②職員のジェンダー意識、③入所者のセクシュアリティへの支援の現状と問題点を聴き取り、支援におけるジレンマがいかなるものかを明確化しようとした。 その結果、①については、当該婦人保護施設においては、管理的な生活指導は現在行われておらず、利用者の「自己決定」を最大限尊重するような支援の方向が明確に打ち出されていること、また「保護更生」が問題となるような局面はすでに過去のものであると観念する支援者が多いこと等が確認された。また、②に関しては、職員の間でもジェンダーに対する規範意識の強度はさまざまであること、③に関しては、知的障がいを持つ入所者のセクシュアリティに関する支援に課題があると認識する職員が複数いること等が明らかになった。 特に③に関しては、知的障がいを持つ入所者が総じて強いジェンダー規範・性別役割意識を内面化しており、結婚や「子どもを持つこと」に対し憧れを抱くあまり、出会い系サイト等での出会いを自ら求め、その結果性暴力被害者になりやすいといった現状が指摘された。支援者である職員は、入所者のかような意識を改変させることは困難であると感じており(=指導的な意味での「コントロール」の断念)、むしろ家庭生活の意味や、安全な性行為の方法を丁寧に説明していくことが重要との認識(=本人の利益と社会の利益を調停するという意味での「コントロール」を慎重に行っていると思われる)が語られた。このような語りの底流には、本人の不利益になる自己決定をどのように支援すべきかというジレンマがあるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
支援者(婦人保護施設の職員(ソーシャルワーカー))へのインタビューによって、「ケア」と「コントロール」の衝突によって生じるジレンマは、「利用者の自己決定を尊重すること」と「そのような自己決定が本人にとって不利益となる可能性が大きいこと」とのジレンマというかたちを取って表出していることが明らかになった。また、かかるジレンマを生み出すものが、入所者のジェンダー規範意識と支援者のそれとのズレにあることも明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、知的障がいを持つ施設入所者への支援、性暴力被害者への支援に関するインタビューを引き続き行い、婦人保護施設においてジェンダー規範やセクシュアリティに関する支援を続ける上で課題となる職員のジレンマについての考察をより深める。加えて研究の総括を行う。
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Causes of Carryover |
研究の進捗に併せて予定通り支出を行ったが、結果的に端数が残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に端数を繰り入れ、予定通り支出を行うこととする。
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Research Products
(3 results)