2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380776
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
小林 良二 東洋大学, 社会学部, 教授 (10137010)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 福祉マネジメント / 地域包括支援センター / 希望福祉支援団 |
Research Abstract |
日韓の包括的生活支援システムについて、下記の1-4をふまえた結果、自治体圏域と行政区圏域の役割分担のもと、総合相談とケースマネジメントを行うという構成に関して、日本の市町村と地域包括支援センターの関係と、韓国の希望福祉支援団(区)と住民センターのそれは、類似する面もあるが、その対象者、組織構成、職員配置、情報システムなどの面でかなり異なっていると考えられた。 1.日本では、高齢分野で地域包括支援センターが設置され、総合相談、介護予防、継続的ケアマネジメント、権利擁護などの業務が行われているが、韓国では、高齢分野だけでなく、障害、子ども、貧困などすべての住民を含む支援ネットワークの構築とサービスの調整がめざされている。しかし、ソウル市内でのヒアリングの結果、自治体全域に希望福祉支援団が設置されたことで、区役所福祉部と行政区住民センターの役割分担がある程度進んできてはいるものの、行政区=シンプルな事例、希望福祉支援団=複雑なケースという役割分担はそれほど明確ではないようであった。 2.希望福祉支援団については、区によって、独立した課として設置されているとは限らず、調整権限はかなり異なるようである。この点は、日本のように、市町村ではなく日常生活圏域に一定の人数の職員を配置する方式とは異なっている。 3.韓国における、区全域と住民センターレベルでの官民協働のネットワーク形成も、自治体によってかなり差があるようであり、サービス提供に関する調整が順調にいっているとは必ずしも言えないようである。民間事業(宗教団体を背景とする社会福祉法人やボランティア活動)が活発であるが、こうした団体をネットワーク化し、統合的な運営するにはさまざまな困難があるようであった。 4.希望福祉支援団に設置された専門公務員の技術については、いわゆる困難ケースに対応するにはかなりのレベルアップが必要だとのことであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)文献研究については、アウトリーチと従来の相談システムの違いに関する整理を行った。しかしながら、より広い概念である「生活支援システム」、あるいは、コミュニティソーシャルワークなどとの関連を整理するには至っておらず、来年度以降の課題である。 (2)東京都を中心とする自治体の見守りネットワークについて、いくつかの自治体で予備的な事例検討を行った。 (3)韓国でのヒアリング調査については、予定通りソウル市の2つの自治体でヒアリングを実施することができた。ここでは、2012年に導入された事例管理(ケースマネジメント)システムの実際を知ることができ、日本の地域包括支援センターで実施されている地域包括ケアとの比較を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度においては、平成25年度の成果をもとにして、次の研究を行う。 ①見守りネットワーク、コミュニティソーシャルワークなどに関する文献の検討と概念の整理を進める。 ②国内での困難事例検討を継続する。 ③見守りと生活支援活動の基礎となるシステムの検討を行う。 ④このため、訪問する自治体の範囲を広げ、システムの構成要素とその組み立て方の検討を行う。 ⑤日本と韓国の現場の実践者・研究者の相互訪問を行い、困難事例の検討と支援システムの検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
PDを予定していた者について、他の研究機関での採用が決定し、研究協力者として活動することとなったことなどによる。 国内出張費(遠距離)、人件費・謝金(通訳・テープおこし)等に充当予定である。
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