2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25380821
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Research Institution | International Pacific University |
Principal Investigator |
村田 久 環太平洋大学, 教育学部, 准教授 (80350445)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会的養護 / 里親 / ファミリーホーム |
Outline of Annual Research Achievements |
社会的養護の今日的動向を確認した。経時データ分析の比較により、社会的養護施設の変化過程、ニーズの移り変わりを明らかにした。 一方で少子化により、児童数は減少傾向にあるものの、子どもの養育環境への社会的意識の高まりにより、保護児童数は延伸傾向が続きつつある。このこと自体は、今まで見過ごされてきた不適切な養育環境に社会が積極的に介入し、子どもにより良い養育環境を提供するようになったと捉えれば、社会全体でみれば適切な対応を行っている結果であると考えられる。 近年最も大きな伸び率を示しているのは、里親・ファミリーホームの委託児童数である。平成11年では2122人であったが、平成24年では50407人となっており、この期間に2.55倍となっていることがわかる。これは、近年の社会的養護における政策的推進の結果である。登録里親数、委託里親数及び委託率の推移からは、平成21年度以降委託児童数は増加傾向にあるが、委託率でみると38%前後で推移しており、委託率は平成21年以降伸長していないことが見て取れる。委託率が伸長しない要因としては、里親委託には実親の同意が必要、将来的に養子縁組を希望する里親が多いなどが挙げられているが、実際的には児童の委託先は児童相談者の担当者個人の裁量によるところが多い。 我が国における晩婚化、未婚化による影響ので、子どもを持ちたくても持てない世帯比率は増加している。このような人たちにとって、里親制度は子どもを育て、家族を形成する貴重な機会としての存在意義があるといえる。子どもへの養育環境、子ども観への意識の高まりにより保護児童は増加しており、里親委託の需要は高いが、委託率の低迷というミスマッチングが旧来型の伝統的子ども観・家族観により引き起こされている現状がみえる。政策形成主体が里親推進に動き出した今、委託決定の現場や国民意識に働きかける情報発信が必要でる。
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