2013 Fiscal Year Research-status Report
愛着スタイル尺度は無意識の情報処理過程を捉えているか
Project/Area Number |
25380840
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
戸田 弘二 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (60207579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三上 謙一 北海道教育大学, 保健管理センター, 准教授 (90410399)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アタッチメント / 愛着スタイル / 内的作業モデル / 潜在的態度 / 潜在連合テスト / 愛着スタイル尺度 / アダルト・アタッチメント・インタビュー / DMM-AAI |
Research Abstract |
本研究では,成人の愛着スタイルを測定するための質問紙尺度の妥当性を,(1)愛着スタイル尺度間の比較,(2)潜在指標との関連,(3)アダルト・アタッチメント・インタビューとの関連,の3つの方法を用いて検討することを目的としている。平成25年度は,潜在指標との関連を中心に愛着スタイル尺度の妥当性を検討した。まず,愛着システムを活性化すると考えられるプライム刺激を閾下及び閾上で提示し,愛着対象の名前などに対する反応時間を測定する4つの実験を行った。その結果は「愛着システムの活性化と内的作業モデルの情報処理機能」(北海道教育大学紀要)と題する論文として発表した。次に,潜在連合テストを用いて,顕在的・潜在的自尊感情及び顕在的・潜在的不安を測定し,これらと愛着スタイルとの関連を検討した。潜在的不安に関しては公表された測度がなかったため,独自に不安IATを作成して検討した。その結果は,「内的作業モデルの情報処理機能について―潜在連合テスト(Implicit Association Test)を用いて―」(日本心理学会第77回大会)と題して学会発表を行った。さらに,GNATを用いて乳幼児の笑顔と泣き顔に対する顕在的・潜在的態度を測定し,これらと愛着スタイルとの関連を検討した。その結果は,「内的作業モデルの情報処理機能について(2)―GNAT(Go/No-go Association Task)を用いて―」(日本パーソナリティ心理学会第22回大会)と題して学会発表を行った。 最後に,DMM-AAIについては,研究分担者の三上が開発者のCrittenden博士の下でDMM-AAIのトレーニングを開始した。具体的には平成25年3月、6月、10月にそれぞれ1週間ずつアメリカでの研修会を受講した。平成26年5月現在でもトレーニングは継続中であり、近日中に行われる信頼性テストに合格すれば、日本での実証研究の使用が認められる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究実施計画のうち,1に挙げた閾下,閾上プライミングを用いた実験は完了し,論文として発表した。2に挙げたAAIのコーディング・スケールと愛着スタイル尺度との関連については,面接までは行ったものの,記録のプロトコル分析がうまくいかず,研究計画そのものの見直しを必要としたため,実施は来年度以降に延期した。その代わりに,IAT及びGNATを用いた潜在指標との関連を前倒しで検討し,いずれも学会で発表した。IATに関しては,顕在的,潜在的不安と愛着スタイルとの関連においては仮説通りの結果が得られたが,潜在的自尊感情と愛着スタイルとの関連では,回避性得点と安定性得点において仮説とは逆の結果が得られた。この理由は,対象概念を対にして測定せざるを得ないIATの方法論上の問題から考察された。そこで,平成26年度には「自己」に対する潜在的態度を独立に測定するための方法論を確立し,上記の考察の妥当性を検討することとした。 DMM-AAIについては,トレーニングの過程で健常群2人、臨床群1人に対して日本語でDMM-AAIを実施し、スーパービジョンの下、分析を行った。また平成25年より翻訳の版権を取得し、現在マニュアル本の翻訳も進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究課題としては,まず第1に「自己」に対する潜在的態度を独立に測定するために,Single-CategoryIATによる潜在的自尊感情の測定を行い,今年度のIATの結果とともに研究成果をまとめ,論文として投稿する。また,GNATの研究成果を論文にして投稿する。第2に,愛着スタイル尺度間の比較を行う。研究実施計画ではIWMSとECR-GOの2つの愛着スタイル尺度相互の関連を検討する予定であった。しかし,最近になってFraleyら(2011)が愛着対象別に測定できるECRの短縮版(ECR-RS)を開発したことから,新たにECR-RS日本語版を作成し,従来の愛着スタイル尺度との関連も検討することとする。 DMM-AAIについては,平成26年6月に再び米国にて1週間の研修を受ける予定である。これは臨床群にDMM-AAIを応用するための研修会であり、今後幅広い被験者にDMM-AAIを実施する上で必要と考えられることから、参加することとなった。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
理由は,研究分担者である三上の4回目の渡米(研修会参加)が翌年度に延期されたことと,人件費や謝金を必要とする質問紙調査を翌年度に行うことにしたためである。 三上が6月に渡米し,予定されていた研修会に参加する。また,また,質問紙調査では質問紙作成にかかる諸費用,質問紙の送付及び返却のための郵送費,データの整理,入力を行う研究協力者への人件費,社会人等を対象にした調査をリサーチ会社に依頼するための謝金等が必要となる。
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