2013 Fiscal Year Research-status Report
給食・清掃の時間の現象学的解明に基づくいじめ予防教育プログラムの開発
Project/Area Number |
25381007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
生越 達 茨城大学, 教育学部, 教授 (80241735)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 聴くこと / 学びの共同体 / 清掃の時間 / 給食の時間 / 現象学的空間論 / コミュニケーション / 教師の存在 / 養護教諭 |
Research Abstract |
I 教育における給食の時間のもつ意味、清掃の時間のもつ意味について文献研究を行った。そこでは、給食や清掃の時間が、授業時間よりも開かれた構造をもっていることが明らかになった。開かれた構造をもった時間におけるコミュニケーションの在り方がいじめの有無と関係しているという仮説を持っているので、今後は、いじめの起きやすい学級集団の在り方について研究を進め、コミュニケーションの在り方と給食や清掃の時間との関連を考えていきたい。 II 学びの共同体に関する先進校を訪問し、そこにおける子どもたち同士のコミュニケーションの在り方を観察した。観察からも共同体の成立が学級における「聴くこと」の成立と深く関わっていることが理解できた。そして「聴くこと」の成立が、子どもたちの対人関係に深く関わっていることが明らかになった。また教師の存在のあり方が重要であることを明らかにした。今後は、いじめの予防と学びの共同体との関係について明らかにしたい。 III 定期的に訪問することはできなかったが、いくつかの学級を訪問し、給食の時間及び清掃の時間の観察を行った。観察からも、やはり清掃や給食の時間が開かれた構造をもっていること、それだからこそ、子どもたちにとってその時間が楽しい時間になる可能性があると同時に、厳しい時間にもなりうることが観察できた。また派生的な研究だが、学校空間のなかでいじめに関して養護教諭が独特の関係性をもっていること、そしていじめ成立の固い空間に多様性を持ち役割を担うことについて明らかにした。 IV ハイデガーやメルロポンティに関わる文献をとおして、空間の在り方及びコミュニケーションの在り方について分析するための準備を行った。 V 派生的な研究だが、近代人としての子どもたちの孤独について、新見南吉の作品を分析することを通して明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学びの共同体の先進校への訪問やまた具体的に清掃や給食の時間の子どもたちの様子を観察分析することにより、現代の子どもたちのコミュニケーションスタイルや子どもたちの関係については明らかになった。特に学びの共同体の観察分析を行い、聴き会える集団が子どもたちの存在にとって大きな意味をもっていることを明らかにできたことは、いじめのない学級づくりへ大きな示唆を与えてくれる。またそこでの教師の存在のあり方や養護教諭の独特の位置付けが明らかになったことも重要な意味をもっている。 また子どもたちの関係を分析するための現象学的な手法についても準備は整っている。いじめをいじめの起きている状況のみから理解するのではなく、日常の、それも開かれた構造をもつ清掃の時間や給食の時間からとらえる視点を得られたことは、いじめのない学級のためのいじめ予防プログラムを考える第一歩となる。 ただ学級の定期的な訪問に基づく観察を行うこと、またいじめについての理解をさらに深めて、いじめの根底にある子どもたちの教室内での存在の在り方や教師の働きかけを解明することが今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
いくつかの学級を定期的に訪問観察し、給食の時間及び清掃の時間の観察を行う。そしてそこで得られた記録に基づいて、子どもたちの空間経験や教師の存在のもつ意味を明らかにする。平成25年度は、定期的な訪問が困難だったが、平成26年度は、継続的な観察を行い、すでえに準備できている現象学的な視点で、子どもたちの教室空間の生き方や教師の存在のもつ意味を明らかにする。 また引き続き、学びの共同体や清掃や給食の先進校への訪問観察を続ける。いじめ予防のプログラムのためには、直接的ないじめ対応を超えて子どもたちのコミュニケーションの在り方に働きかけることが必要なので、そうした点について更に研究を進める。 さらにいじめに関わる文献を読みすすめ、いじめ予防のプログラムを具体的に検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
子どもたちの「いじめ」や「いじり」を含む対人関係の在り方が,当初考えていたより,複雑だったために,その理論的構成に時間がかかり,また観察分析にも時間がかかってしまった。そのために,当初予定していただけの観察訪問先を減らさざるを得ないことになってしまった。そのため,訪問のための旅費及び分析のための謝金等を予定どおりに消化することができなかった。 いじめに関する理論的研究の目処がたち,予防的な対応としては学級集団の在り方及びコミュニケーションの取り方が重要な意味をもつことがはっきりしてきたので,平成26年度は,その実証のために多くの学校を訪問し観察分析をしたい。そのためには,訪問のための旅費と,また分析のための謝金等が必要となる。また,清掃や給食の時間のもつ意味に対する理論的研究やまた現代の子どもたちの対人関係のあり方を明らかにするために,さらに文献研究をすすめる必要もある。
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