2013 Fiscal Year Research-status Report
初等数学の教育内容構成に関する実験的・歴史的研究-分数教授の歴史と構想
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25381016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
岡野 勉 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (30233357)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大田 邦郎 千葉大学, 教育学部, 教授 (40176889)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 初等数学 / 分数の定義 / 分数除法 / 演算の意味と規則 / 国定教科書 / 数学的認識 / 教育内容 / 『算術教育』 |
Research Abstract |
(1) ≪実験的研究≫ 分数の定義の導入過程に対応する教育内容・教材構成について検討を行い、改訂を加えた。これまでの検討過程において、多くの問題が新たに開発され、それらがすべて取り込まれた結果、概念形成の筋道が不明確となっていた。今年度においては、この点についての具体的な検討を行い、内容の簡素化、それによる筋道の明確化を図った。これにより、実験授業の準備を整えることができた。 (2) ≪実験的研究≫ 分数除法の意味と規則に関する教育内容・教材構成に改訂を加えると同時に、小学校6年生を対象とする授業を実施し、その結果について、授業者を含めた形で検討を行った。授業の対象となった学級では、「倍」を用いた分数とその四則演算に関する授業および内包量に関する授業が行われていた。今回の授業においては、これらの内容を基礎とする形で、内包量(速さ)とその逆内包量(遅さ)を用いて、分数除法の意味と規則に関する説明を試みた。乗法によって定式化された量の関係を、遅さを用いて除法に書き換えることを最終的な到達目標とした。授業の結果、当該の学級においては、この目標に到達可能であること、感想文によれば、それが、ある程度の困難さを含みながらも、多くの子どもに歓迎されていることが明らかになった。 (3) ≪歴史的研究≫ 分数の定義の導入過程について、第1期から第3期改訂版までの国定算術教科書『尋常小学算術書』を対象とする分析・評価を試みた。その結果、商分数の論理に依拠した分数の定義が重視され、より早期に導入される形に変容していることが明らかになった。この点に加え、師範学校からの意見報告の内容が上記の変化に関する重要な要因となっていることも合わせて明らかになった。 (4) ≪歴史的研究≫ 歴史的研究において重要な資料となる雑誌『算術教育』について、そのPDF化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) ≪実験的研究≫ 分数の定義の導入過程について、これまでの研究成果を再検討し、その結果を具体化した形で、教育内容・教材構成の形態を明らかにすることができた。これは教育内容構成の出発点を定める意味で重要な成果である。 (2) ≪実験的研究≫ 分数除法の意味と規則に関する説明は、分数のみならず初等数学教育において最も重要かつ困難な問題である。この問題に関して、これまでの研究成果を再検討すると同時に、その結果を具体化した形で、教育内容・教材構成の形態を明らかにすることができた。この点に加え、それに基づく授業を実施することにより、さらなる改訂に向けた検討の材料を得ることができた。これは重要な研究成果である。 (3) ≪歴史的研究≫ 国定教科書における分数の定義の導入過程については、重要な変化が見られること、および、その変化が教育実践現場からの意見報告の具体化として理解可能であることが明らかになった。分数論それ自体の転換を示す重要な事実であるにも関わらず、先行研究においてはほとんど注目されてこなかった事実が解明された。 (4) ≪歴史的研究≫ 重要な研究資料でありながら、その有効な活用が困難な状況にあった雑誌『算術教育』について、その大部分をPDF化することにより、資料の検索が極めて容易となり、歴史的研究の進展にとって重要な基盤を構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) ≪実験的研究≫ まだ検討が行われていない、分数の性質・大小関係、加法、減法に関する教育内容・教材構成についての検討を進め、実験授業を実施する。 (2) ≪実験的研究≫ 平成25年度に実施した除法の意味と規則に関する授業について、その分析・評価を進め、教育内容・教材構成の適切性を検討すると同時に、改訂の課題を明らかにする。 (3) ≪歴史的研究≫ 国定教科書における分数の教育内容・教材構成の検討をさらに進めると同時に、当時における実践的研究の展開過程の解明を進める。 (4) 平成25年度に得られた成果を含め、研究成果の学会発表、論文の執筆を進める。
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Research Products
(5 results)