2015 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ教育学におけるコンピテンス概念の史的展開と今日の教育改革での意義
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25381017
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
津田 純子 新潟大学, 教育・学生支援機構, 教授 (90345520)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | コンピテンスの定義 / コンピテンス指向の大学改革 / 教育・学習プロセス / 大学の理念 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度の研究調査は、欧州高等教育圏構想のもとで「雇用可能性」を重要な改革キーワードの一つとして行われている、「コンピテンス指向」の高等教育改革が、ドイツの大学関係者の中で「人間形成という伝統的な大学理念の軽視」「政治経済的合理化・規格化方略」と批判されながら、進んでいるのはなぜかを中心に、歴史的実践的アプローチで実施し、以下の知見が得られた。 1.コンピテンスの今日の定義(「すべての人間がもつ学習過程における自己組織化能力」)が、大学の理念を成立させたフンボルトやフィヒテら新人文主義者の言語哲学論、「言語の人間形成作用」に遡る点が史的研究によって指摘されている。例:B.レデラー2014年『コンピテンスと人間形成?』、R.ライヘンバッハ2014年「ソフト スキルズ」等。 2.コンピテンス指向の課程(特に学士課程)への学生による評価は高く(Nickel 2011)、教育・学習プロセスでの主体として学生を解放する可能性があると理解されるようになった。例えば、ハイデルベルク・モデルは「フンボルトの教育原理を今日の社会的要請に則して解釈し直し深められた」と説明されている(Chur2012,S.294)。 3.2011年には、「コンピテンス指向」は良い教授の重要な特徴とされたが、その普及は自己調整学習の指導50%、新しい思考文化の伝授30%程で(Nickel S.13)、質や課程の管理運営のための新しい専門職、「コンピテンス指向」部門が大学に設置されるようになった。 4.「コンピテンス指向」の高等教育改革とは「教育・学習プロセスを変えること」という了解のもとで、「刺激で生じる学生の人間形成プロセス」の観点から、専門的内容と一般的職業的(キーコンピテンス)能力の指導と評価が構想され、単位制度下で具体化されている。後者は部局や学生と連携しながら、大学付属施設で提供される場合が多い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、日本でのコンピテンス概念のあいまいな捉え方、不十分な歴史的理論的検討を打開するために、今日の教育改革において国際的に重要なコンピテンス概念がドイツ教育学分野ではどのように捉えられ、どのように意義づけられてきているか、明らかにすることであった。これまでの研究調査から、以下の重要な相違点を把握することができたことから、「おおむ順調」とする。 1.コンピテンス概念は、大学理念を成立させた新人文主義者の人間形成思想にさかのぼることを確認でき、ドイツにおける今日のコンピテンスの捉え方は、日本における米国経由の「業績」を重視するコンピテンス概念とは異なり、「人間形成」の観点を継承発展させるものである。 2.欧州やドイツで進むコンピテンス指向の高等教育改革では、「教育・学習プロセスを変えること」という共通認識がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究について、主に大学教授学や高等教育の分野に傾いて明らかにしてきたので、当初の研究計画を念頭に置き、学校教育改革や教育学の分野について補足研究を進め、研究全体をまとめる。
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Causes of Carryover |
研究計画ではドイツにおいて研究調査をする予定であったが、第一にコンピテンス概念の歴史的研究は日本で文献を入手できたこと、第二に今日多様で急速にコンピテンス指向の教育改革が進み、その状況を研究課題の視角から把握するためには現地に行く前に十分に資料調査をして調査対象を検討し直すことが必要になったことから、十分に時間を取って効果的に現地調査できるように基金を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
コンピテンス指向の教育改革モデルとされている、ハノーバー大学やハイデルベルク大学、ケルン専門大学、ベルリン工科大学を調査する。この動向を専門家として鑑定したN.シャーパー氏や、コンピテンス概念史に関する詳細な博士論文をまとめたB.レデラー氏、大学教授学者や教育学者などに面談する。
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Research Products
(2 results)