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2016 Fiscal Year Research-status Report

ドイツ教育学におけるコンピテンス概念の史的展開と今日の教育改革での意義

Research Project

Project/Area Number 25381017
Research InstitutionNiigata University

Principal Investigator

津田 純子  新潟大学, 教育・学生支援機構, 教育支援員 (90345520)

Project Period (FY) 2013-04-01 – 2018-03-31
Keywordsコンピテンス指向の教育改革 / 人間形成(Bildung)の理念 / 欧州・各国資格枠組み / GBW(教育・知識学会) / EPIK(国際的文脈でのプロフェッショナル開発)
Outline of Annual Research Achievements

2016年度の研究調査は、コンピテンス指向の教育改革の動向と、それに対する伝統的なBildung概念に基づく批判的論議について実施した。その結果得られた知見は、以下のとおりである。
1.日本の学校教育ではコンピテンシー(コンピテンス)が重視されるが、大学教育では、学士課程教育の目的とされる「学士力」(文部科学省2008年)は「bachelor competencies」と英訳されてコンピテンスが用いられるものの、コンピテンスという概念は大学教育研究者の間でもほとんど注目されていない。学校教育研究者の間では、ドイツ語圏のコンピテンス指向の教育改革はPISAショックによると理解され、背景となっている欧州の新経済・社会戦略2020(リスボン戦略2000を継承発展)のもとでのEU資格枠組みに視野が及んでいない。
2ドイツ語圏の学校教育および大学教育では、EU資格枠組みをもとにした国単位の資格枠組みによりコンピテンス指向の教育改革(カリキュラム開発、授業開発)が進んでいる。この改革の必然性は「国際的に起きているパラダイム転換」として実証済みとみなされている(Endbericht EPIK)。
3.コンピテンス指向のカリキュラム開発の代表例として、EPIK(国際的文脈でのプロフェッショナル開発)や「ラインラント=プファルツ州基礎学校枠組みプランの倫理に関する部分的枠組みプラン綱領」などがある。
4.この改革動向の下で、伝統的な人間形成(Bildung)の理念がコンピテンス化し、知識の伝授が疎かにされている」という論争がGBW(教育と知識学会2010創設)などを中心に展開されてきた。コンピテンス指向の教育改革推進派(学術審議会、教育行政関係者、研究者)は、批判を真摯に受け止めつつ、卒業生のコンピテンス調査をもとにした改革論(G.Eberhard2010)のような、実証的実践的研究を奨励している。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究は、日本でのコンピテンス概念のあいまいな捉え方、不十分な歴史的理論的検討を打開するために、今日の教育改革において国際的に重要なコンピテンス概念がドイツ教育学分野ではどのように捉えられ、どのように意義づけられてきているか、あきらかにすることであった。これまでの研究調査から、以下の重要な相違点を把握することができたことから、「おおむね順調」とする。
1.コンピテンス概念は、大学の教育理念を成立させた新人文主義者の人間形成思想にさかのぼること、ペスタロッチー研究者でもあるロートがコンピテンス概念を展開したことはドイツ語圏内で周知されていることを把握できた。
2.欧州やドイツで進むコンピテンス指向の高等教育改革は、ヨーロッパ資格枠組み→各国資格枠組みのもとでカリキュラム開発や授業開発といった形で進んでいる。

Strategy for Future Research Activity

本研究について、日本の大学教育改革の問題を念頭に置き、ドイツ語圏で進むコンピテンス指向の教育改革(カリキュラム開発、授業開発)や教授学の分野について補足研究を進め、研究全体をまとめる。

Causes of Carryover

研究計画では、コンピテンス指向の教育改革モデルとされているケルン専門大学などを調査し、DGHD副会長N.シャーパー氏やB.レデラー氏、大学教授学者や教育学者などに面談する予定であったが、ドイツ出張の準備をするなかで、ドイツにおいてコンピテンス指向の教育改革が進むにつれ、日本にも大きな影響を与えてきた、伝統的な人間形成(Bildung)の理念が「コンピテンス化している」という論争がGBW(2010創設)を中心に展開されている動向がみえてきた。この動向に日本では若干注目されて研究発表されている。しかし、これらの先行研究は本格的な取り組みではなく問題点が多いことに気づき、ドイツ出張計画を練り直して年度末に実施したが不十分に終わった。そのため、補助事業期間延長を申請し、次年度の調査で正しく把握した上で完成度の高い成果報告をまとめることにした。

Expenditure Plan for Carryover Budget

これまでの研究成果から得た知見をもとに、先行研究の問題点と日本の大学教育改革上関連するテーマを明らかにした上で、GBW会長グルシュカ教授への面談調査を準備する。GBWなどの批判を受け止めつつ学術審議会の活動を通してコンピテンス指向の教育改革を進めるライス教授、オーストリア圏で教師教育改革の代表者、シュリッテサー教授などへの面談調査を準備し、実施する。

  • Research Products

    (3 results)

All 2017 2016

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] 初修外国語教育における自己調整学習の可能性2017

    • Author(s)
      山田容子・津田純子
    • Journal Title

      新潟大学高等教育研究

      Volume: 第4号 Pages: 印刷中

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] ペスタロッチーの言語教育思想と人間形成の理念2016

    • Author(s)
      津田純子
    • Organizer
      日本ペスタロッチー・フレーベル学会
    • Place of Presentation
      広島大学東千代田キャンパス
    • Year and Date
      2016-09-11
  • [Presentation] ドイツ教育改革におけるコンピテンスと人間形成に関する論議2016

    • Author(s)
      津田純子
    • Organizer
      日本教育学会
    • Place of Presentation
      北海道大学
    • Year and Date
      2016-08-25

URL: 

Published: 2018-01-16  

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