2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25381096
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
岩田 遵子 東京都市大学, 人間科学部, 教授 (80269521)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 伝承遊び / 遊びの伝承 / 人間関係 / 集団 / 遊び保育 / ノリ |
Research Abstract |
今年度は、「研究実施計画」の中の下記2つの調査研究を行った。 1)伝承遊びではないが既に遊びの伝承(リレーごっこ、ドッジボール等)が園内に行われているめばえ幼稚園(我孫子市の私立幼稚園)の伝承はどのような構造によって可能となっているか(方法:月2回程度のフィールド調査)をエスノグラフィーによって明らかにするため調査。 今年度は、遊びの伝承の実態を明らかにすることを目的とした。例えばリレーごっこでは、夏休みが明けると園庭のトラックを子どもたちが自発的にバトンを持って走る姿が見られ始め(1学期は見られない)、そこに保育者が参加し、その後クラスの保育者主導の活動となり、運動会が行われる。この園の運動会は、一般の幼稚園とは大きく異なり、子ども主体というよりは、父兄(卒園生が3分の1)、卒園生等の参加が非常に多く、彼らが運営進行を務めており、近代学校の運動会というよりは、前近代的村落共同体の村祭り的なものであり、それゆえ、めばえ幼稚園における子どもの遊びの伝承は、村落共同体の祭りの伝承構造と類似した構造を持っており、人間関係は非常にノリの共有度が高い(同調性)と考えられる。 2)フィールド対象園(浦安市立若草幼稚園)において、幼児の集団の凝集性を高め(小川博久の『遊び保育論』に基づく)、伝承遊びの伝承性を復権する条件を構成するアクションリサーチ。 『遊び保育論』の実践が高いレベルのものが確保され、幼児集団の凝集性は高くなっており、子ども同士のノリの共有度も高くなったと思われるが、年少児が年長児の遊びを見て真似る、という条件を構成する事は難しかった。ただし、集団の凝集性が高いがゆえに、発達障碍児が年度当初逸脱行動が非常に多かったが、年度末には逸脱行動がほとんど見られなくなり、補助教諭を必要としないまでに成長する姿が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「9.研究実績の概要」で述べた1)については、めばえ幼稚園の遊びの伝承の実態が徐々に明らかにされつつあり、保育者の行動、父兄の行動等、園全体がひとつの「村」のようになっている、ということが明らかになりつつあるので、初年度としてはだいたい順調である。ただし、なぜそのようなことが可能になっているのか、という詳細な部分については今後の課題である。 同2)については、伝承構造を構成することを試みたが、園舎と園庭の構造という物理的条件の関係で、予想していたよりも困難であったこと、また、公立幼稚園のため数名の教諭が25年度末で異動したことによって、26年度は新しい園で実践を行う必要があること、などの状況により、当初の計画より遅れ気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
「9.研究実績の概要」で述べた1)については、次の5つ点をさらに調査することが必要と思われる。それは、1リレーごっこやドッジボールがどのように子どもたちから自発的に遊ばれるようになるか、という点についての具体的な観察記録を取る、2園で行われる他の行事(お誕生会、インディアン祭り、クリスマス会、お別れ会)についての詳細な記録を取る、3.各行事への父兄の高い参加意識の要因についての調査(アンケート等)、4.保育者へのインタビュー調査。5.園長及び理事長へのインタビュー調査、である。これらの遂行のためには、研究協力者の参加が必要であり、協力は得られると思われる。 同2)については、新しく私立幼稚園を対象園として選定済みであり、『遊び保育論』による保育実践も行われているので、遅れ気味であるが問題はなく、26年度より、伝承遊びの導入の実践を行う予定である。なお、旧若草幼稚園の教員の異動先も対象園として協力が得られるので、『遊び保育論』の実践からアクションリサーチを行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ分析のための機器(PC)の購入手続きが遅れてしまったことと、当初の予定とは異なり、研究協力者の都合が合わず、25年度の参加が困難であったことから、25年度の使用額が予定より少なくなった。 25年度に購入予定であったデータ分析のための機器を26年度は購入する(90万程度を予定)。また、研究協力者を増員し、フィールド調査をより詳細に行うことができると思われるが、そのための交通費が必要となる(20万程度を予定)。
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