2013 Fiscal Year Research-status Report
教育の質保証に資する学校支援の組織・構造に関する日英比較研究
Project/Area Number |
25381107
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
高妻 紳二郎 福岡大学, 人文学部, 教授 (20205339)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 学校改善 / 学校評価 / 教育政策 / イングランド / ティーチングスクール |
Research Abstract |
現在のイギリスでは2010年の政権交代後、アカデミーやフリースクール、ティーチングスクールといった新しいタイプの学校の出現や増加などが最近の傾向である。そして、恵まれない家庭や地域における幼児教育(private early years)の手当ても喫緊の課題であることが看取される。昨今の私立学校もきわめて多様化の様相を呈していて、全体の教育水準の維持向上を役割とするOfstedの役割が十分に機能しているかどうか分析が困難な面もうかがえる。 また、上記のティーチングスクール(指導的立場にある学校を中心とした連携・協同のシステムを導入することによって各校の教育水準を向上させようとする自律的取り組み:TS)は、教育をマネジメントする学校の責任を著しく高めるとともに、学校に教育の自由を高度に与えようとする現政府の方針(アカデミー等の推進)の一環をなすものである。現時点では専門的教育実践の質と児童生徒の学業成績が目覚ましく改善し得た素晴らしい学校を全国で500校選出してTSとして指定する構想が実現に向けて動き出している。このように今日のイギリスにおける教育政策はまだ確立しているとはいえないが、今般の教育改革事情をめぐるキーワードとして自律性(autonomy)、協同(collaboration)、自由裁量(freedom)、多様性(diversity)、自己改善(self-improvement)をあげることができ、学校主導の改革に重点が移行されていることが指摘できる。 我が国においても自己評価や関係者評価結果に基づいた改善が取り組まれる事例が一部見られ始め、年度を超えた改善サイクルの設定も徐々に取り組まれ始めている。広く共有されることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年3月11日にロンドンで開催されたイギリス教育経営学会(BELMAS)のカンファレンスに参加し、現地の教育経営研究者や研究動向を整理することができたことは一定の前進であると自己評価している。 国内においては、平成25年度までに学校関係者や専門家による学校評価を経験した小・中学校の管理職を対象とした聞き取り調査を実施した。長期的なサイクルでの学校改善の実態について追跡できたことも成果である。次年度に引き続く課題の整理ができているが、一般教諭からの聞き取りが不十分であった。記して課題としておきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の趣旨である「教育の質保証を目的とした学校支援」をめぐる論点を明らかにするために、今後は以下の調査項目を重点的に取り上げる予定である。可能な限りイギリスと日本で共通の事項について整理していきたい。 ・学校が設定している達成目標の達成度と学校支援の態様 ・学校側が特に重視している学校の長所、短所に関する支援の傾斜性とその妥当性 ・教師の教育力向上の取組とその成果、方法の妥当性 ・学校経営上、マネジメント・チームが学校支援プロセスにどうコミットし、学校改善計画に生かしているかといった取組の妥当性等 特にわが国における「教育の質保証」を目指す学校実践を検証するために、自ら学校評価委員として国や県市の事業に関わった事例の事後検証を引き続き行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
直接経費1,200,000円のうち1,143,636円を消化し、56,364円の次年度使用額が発生したが、これはイギリス調査日程を短縮したこと、予定していた航空運賃よりも安価で出張できたことによるものである。 適切な時期を見てイギリス調査を継続するほか、所属学会の研究会やシンポジウム出席の旅費として、平成26年度受領額に加えて使用する予定である。
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