2013 Fiscal Year Research-status Report
大学における自閉症スペクトラム支援体制モデル構築のための臨床社会学的研究
Project/Area Number |
25381145
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokuriku Gakuin University |
Principal Investigator |
俵 希實 北陸学院大学, その他部局等, 教授 (60506921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海口 浩芳 北陸学院大学, その他部局等, 准教授 (10413197)
竹内 慶至 金沢大学, 学内共同利用施設等, 助教 (80599390)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム / 大学 / 支援 |
Research Abstract |
本研究の目的は、大学における自閉症スペクトラム障害(ASD)の「問題状況」およびASDへの支援体制の状況を明らかにすると同時に、ASDに対する支援体制モデルを構築することである。そのために、3つの課題を設定し、メンバで役割を分担して進めている。 課題1の大学でのASDの問題状況と支援体制の現状把握については、大学の支援体制に関する資料や文献を収集し整理するとともに、ASD学生への支援体制に関して先行する大学の最新動向の情報収集に努めた。特に、九州大学学生支援センターでは担当教授に、札幌学院大学では障害児教育の専門家に聞き取り調査を行い、詳細な情報を得た。 課題2のASDをめぐる事例検討については、代表者の所属学科の中で、ASDもしくはASDと思われる学生についての検討会を4回行った。毎回1人の学生を対象とし、その学生と関わりを持つ学内教職員と学外の臨床心理士で会を構成した。学生についての詳細な情報を交換することからASD学生への支援体制について検討した。 課題3のASDに対する高大接続の現状と課題の解明については、石川県内の公立高校に在職する特別支援教育コーディネーターを対象に聞き取り調査を行った。25年度は、全45校のうち25校で実施した。 「自閉症スペクトラム研究会」については、4回、開催した。第1回から第3回までは、斎藤清二氏(富山大学保健管理センター教授)、高桑しなこ氏(加賀高等学校特別支援教育コーディネーター)、鈴木ひみこ氏(関西学院大学総合支援センターキャンパス自立支援室コーディネーター)に講師を依頼し、第4回は、東海林渉氏(北陸学院大学助教・臨床心理士)と本研究分担者の竹内が担当した。多様な知識を獲得することができたと同時に、講師を依頼した研究者とのネットワークを構築することができた。研究会の成果については、社会に向けて発信する意味で報告書を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1の大学でのASDの問題状況と支援体制の現状を把握することについては、先進的な取り組みを行っている2大学で、支援策そのものの効果や問題点、ASD学生に対する実際の対応について聞き取りを行うことができた。 課題2のASDをめぐる事例検討については、代表者の所属学科のASD学生またはASDと思われる学生を事例として検討することから、ASDの学生の実態を捉え、その上で、大学がASD学生を円滑に受け入れていくことができない原因とASD学生への対応を検討し、いくつかの知見を得た。 課題3のASDに対する高大接続の現状と課題を解明することについては、石川県内の公立高校の支援コーディネーターを対象とした聞き取り調査を25校にて実施したことで、高校と大学がどの程度、またどのように連携しているのかについて実態が明らかになりつつある。 以上のように現在までのところ、おおむね予定通りに進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1の大学でのASDの問題状況と支援体制の現状把握については、資料収集とその整理、聞き取り調査を進めるが、ASD学生への支援体制に関して大幅に先行する大学を対象とするのみならず、支援体制が整っていない大学についての情報も収集する。支援体制が整っていない理由を抽出することで、モデル構築の際のポイントとして挙げている大学がどの程度の資源を保有していればどの程度の支援体制を整えることができるのかという点を解明することにつながるからである。しかし、支援体制が整っていない大学の情報を得ることは、聞き取り調査の可能性も含めて難しいと予想される。自閉症スペクトラム研究会等を通じて構築したネットワーク等を活用し対応する予定である。 課題2のASDをめぐる事例検討については、引き続き、代表者の所属学科の中で、ASDもしくはASDと思われる学生を事例とした検討会を行う。また、広くさまざまな事例を収集し、それらを検討する。事例検討会は、事例とした学生と関わりを持つ学内教職員と学外の臨床心理士で会を構成しているが、大学用務や講義等で教職員が多忙であるため開催日時の調整がより一層困難となることが予想される。日程調整を早目に行うことで対応する予定である。 課題3のASDに対する高大接続の現状と課題の解明については、引き続き、石川県内の公立高校に在職する特別支援教育コーディネーターを対象として聞き取り調査を実施する。25年度は45校中25校において調査を行ったが、予想していたよりも高校が協力的であることから、全数調査を目指すこととした。 以上を26年度末までに終了させ、それ以降は、すべての課題および引き続き開催予定である「自閉症スペクトラム研究会」での内容を総合して成果をとりまとめ、支援体制モデルを検討する。そして、その成果を、関連学会で報告し、フィードバックを求める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、高校の支援コーディネーターを対象とした調査の実施は困難を伴うのではないかと予想していた。調査に応じてもらえるのか、アポイントメントを容易に取ることができるのか等の不安があったが、予想よりもスムーズに進んだため、予定していた県外での資料収集よりも高校調査を優先した。よって資料収集のための旅費を予定通り使用することができず次年度使用額が生じた。 高校調査は困難が予想され、当初は石川県内の複数校のみを対象とする予定であった。しかし、予想していたよりもスムーズに進んでいることから、現在は,石川県内のすべての公立高校で調査を実施することを目指している。よって、テープ起こしに係る費用が予定よりも高額になるため、その費用に使用する。また、事例検討会についても、1回の会の時間が予想していたよりも長時間となっているため、事例検討会のテープ起こしにも使用する予定である。
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