2014 Fiscal Year Research-status Report
小学校教員養成課程における音楽指導力向上のためのプログラム・モデルの構築
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25381158
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
中西 紗織 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (20584163)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 教員養成課程 / 音楽指導力向上 / 伝統音楽・伝統芸能の伝承 / 実演家と大学教員の連携 / 声 / 身体 / 演劇 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、学生の音楽能力向上や伝統芸能・伝統音楽に関する経験を深めることを目的として体験学習を行い、大きな成果を得た。主な内容は次の四点である。 1.文献や実践的な研究に関する調査とその成果発表 引き続き文献研究等を行い、音楽指導力向上のプログラム・モデル構築への方策の一つを提示することを目的として、大学生を対象として2012年度までに行ってきた能の指導に関する研究論文を発表した。(中西「教員養成課程における能の指導に関する研究――声と身体に焦点をあてた体験学習の意義と可能性――」『全国大学音楽教育学会創立30周年記念誌』) 2.学生の実態把握 アンケート調査、レポートについて検討し、聴き取り調査を行った。 3.実演家との打ち合わせ 昨年度の打ち合わせの内容をさらに焦点化し、学生が音楽科の授業で取り扱う可能性の高い教材を選び、その扱い方・指導についての計画を具体化した。 4.体験講座 本研究の主な指針の一つである「本物の中で学ぶこと」を重視した、①楽器を知る講座、②能の体験講座、③能・歌舞伎等の鑑賞講座を実施。①「日本の楽器・世界の楽器」と題して、琵琶、尺八、箏、バラライカの演奏家を大学に招き、各楽器についてのレクチャーとミニコンサートを2回行った。各回学生約30名出席。②能の実演家の稽古場を学生5名が訪問し、《羽衣》冒頭部の謡と、キリの謡・仕舞を実演家から直接習った。能面・装束の一部も見学。一人の学生が装束付を体験し、他の参加者が見学した。入門展「能楽入門」(国立能楽堂)、「能面と能装束―みる・しる・くらべる」(三井文庫美術館)見学(平成26年7月29日~31日)。③歌舞伎《菅原伝授手習鑑》(歌舞伎座)、狂言《鬼瓦》と能《桜川》(国立能楽堂)を鑑賞。舞台空間、劇場構造も観察。企画展示「文楽入門」(伝統芸能情報館)見学(平成27年3月14日~16日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学生の実態を把握し、より効果的に音楽指導力に結び付くことを視野に入れて、体験講座や鑑賞講座を実施した結果、学生からの積極的な参加に加えて、各自体験したことから日本の伝統芸能・伝統音楽のよさや新たなことを発見し、日本の伝統芸能・伝統音楽への理解を深めた。さらに「声」や「身体」に関する創造的活動や表現活動に結び付く力を向上させていることがうかがわれた。今年度の体験的学習の大きな効果があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果を踏まえて、最終年度にはさらに焦点化した体験講座と鑑賞講座を実施し、受講した学生たちの音楽指導力の向上について検討する。昨年度示した次の四点を発展させてさらに検討を続け、学習プログラム・モデルの構築を目指す。 ①音楽実技において「声」「身体」「伝えるプロセス」を音楽指導力に結び付く鍵概念として捉え、それらを総合化した学習内容と指導方法について再検討する。 ②実演家から直接「模倣」という方法によって学ぶ意味を再確認し、実演家のフィールド即ち実演家が伝える場でしか体験できないものの重要性を再認識する。「世界への潜入」を重視する。 ③実演家と大学教員が協力連携し、それぞれの立場や専門分野を生かした、よりよい学習プログラム・モデルの構築を目指す。 ④「『本物』の中で学ぶこと」、「『流れ』を重視すること」という指針が、以上のことの根底を支えていることを意識し、教員養成課程に学ぶ学生たちが未来に向かって広い視野を持ちつつ、確固とした目的や見通しをもって音楽指導力について考え続けていけることを展望する。
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Causes of Carryover |
計画では、鑑賞講座の入場料(歌舞伎や能)と美術館等入場料を予算に計上していたが、助成金の使用に該当しないことが判明し、その費用の支出がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
人件費として使用する計画である。平成26年度実施して大きな成果があった、楽器の演奏家による講座を、平成27年度も異なる楽器の専門家を招いて実施する予定である。
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Research Products
(4 results)