2014 Fiscal Year Research-status Report
家庭科教育において生活経営力の育成を評価するパフォーマンス課題の開発
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25381163
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
角間 陽子 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (70342045)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生活経営力 / パフォーマンス課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
家庭科教育において育成する「生活経営力」として設定した「b:生活の在り方を社会との関係に基づいて多角的に省察し変革するために、生活資源の充実・活用を図る」について、商品・サービスの選択や環境に配慮したライフスタイルを題材として消費生活の学習における「永続的理解」に対するパフォーマンス課題のシナリオを作成した。このパフォーマンス課題に取り組むための学習指導について構想するとともに教材を開発し、研究的実践としての授業を研究協力校において行った。 パフォーマンス課題に取り組むための学習指導の構想および教材開発にあたっては、まず、活用を図る生活資源として、研究的実践としての授業に至るまでに行われた学校行事に向けて学習した事項であり、かつ本時の学習指導やパフォーマンス課題のシナリオに関連する「事実的知識」と「個別的スキル」をも含めて、本研究における「知の構造」を整理した。次に「転移可能な概念」と「複雑なプロセス」に位置づけた内容を中心に学習指導過程を組み立てるとともに、学習前からの生徒の変化を見取ることができるよう工夫した。 生徒のパフォーマンスを分析したところ、商品・サービスの選択や環境に配慮したライフスタイルを題材とした消費生活の学習における「永続的理解」についての知識やスキルのうち、活用を図ることができた割合が7割に達した生活資源がある一方で、2割にとどまった生活資源も見出されたことから、生活の在り方を社会との関係に基づいて多角的に省察し変革する生活資源としての知識やスキルの意義を強調して題材計画や学習指導を改善する必要性が示唆された。 これらの研究成果を学会等で報告するとともに論文にまとめ、関連する学会誌において公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生活経営力を評価するパフォーマンス課題の開発という本研究の目的を達成するためには教育現場の協力が不可欠であることから、研究協力校の年間指導計画や学校行事等に配慮するとともに、担当教員との打ち合わせを綿密に行う必要がある。したがって3年間の研究期間のうち、1年目と2年目はパフォーマンス課題に取り組むための題材計画の立案や学習指導展開の検討、教材開発を中心に研究的実践を行うことを優先して研究を進展させてきた。設定した二つの生活経営力のうちのひとつである「b:生活の在り方を社会との関係に基づいて多角的に省察し変革するために、生活資源の充実・活用を図る」については、中学校家庭科「D 身近な消費生活と環境」領域において複数のパフォーマンス課題を作成するとともに、それぞれのパフォーマンス課題に取り組む研究的実践としての授業を行うことによって生徒の思考を分析することができた。もうひとつの生活経営力である「a:他者とよりよい関係をつくるために、生活資源の充実・向上を図る」については当初計画にやや遅れてはいたものの、「A 家族・家庭と子どもの成長」領域において家族とのかかわりについての生活場面でパフォーマンス課題のシナリオやパフォーマンス課題に取り組むための学習指導について検討することができた。一方、生活経営力に関連する「生活資源」についての生徒の意識や実態を明らかにするため、複数回にわたって実施したアンケート調査で得られたデータは入力を済ませた段階であり、詳細な分析はこれからである。 以上の進捗状況から、研究全体として現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」に位置付けられると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、研究の最終年度となる本年度はまず、これまでの研究的実践において取り組んできたパフォーマンス課題に対する生徒のパフォーマンスをさらに詳細に検討する。また、これまでの研究的実践から得られた知見を踏まえてパフォーマンス課題のシナリオおよびパフォーマンス課題に取り組むまでの学習指導の過程や題材計画の改善を図っていく。加えて本研究における「生活経営力」すなわち「a:他者とよりよい関係をつくる」と「b:生活の在り方を社会との関係に基づいて多角的に省察し変革する」に関連する「生活資源」についての生徒の意識や実態のアンケート調査のデータを統計的に処理し、結果を分析する。本研究で「生活経営力」として設定した「a」と「b」の二つの視点から、必要な生活資源としての知識・スキルおよび学習内容を整理する。 次に、これまで進めてきた2年間の研究成果を踏まえて、「a」と「b」の二つの「生活経営力」を育成する題材計画と学習指導案及び教材を、主に中学校家庭科の「A 家族・家庭と子どもの成長」と「D 身近な消費生活と環境」の領域を中心として、複数の単元を組み合わせることによって再構成する。さらに、それぞれの単元や題材計画全体におけるパフォーマンス課題の位置づけ方についても検討していく。再構成した題材計画と学習指導案及び教材をもとに、中学校・高校家庭科教員を対象としたインタビュー調査を行うことにより、生活経営力を評価するパフォーマンス課題およびそのパフォーマンス課題に取り組むための学習指導を教育現場に導入する可能性について考究する。 得られた研究成果をとりまとめ、関連する学会等で報告する。
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