2014 Fiscal Year Research-status Report
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25381226
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
河内 昭浩 安田女子大学, 文学部, 准教授 (10625172)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 漢字・語彙指導 / コーパス / 教科書研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の成果として,まずは「中学校教科書語彙表」の完成が挙げられる。2014年度使用の中学校全教科の教科書本文をコーパス化し,語彙を抽出して一覧表を作成した。既存の教科書のコーパスとしては,すでに2005年度使用のデータが手元にある。そこで,現在の教育課程の教科書と旧課程の教科書の語彙を比較するために,「中学校教科書新旧対照語彙表」も作成した。また別に,電子化した教科書のデータから,ルビ付きの漢字をすべて抽出し,「中学校教科書漢字ルビ表」を作成した。またルビ表についても,旧課程の教科書と比較した「中学校教科書漢字ルビ新旧対照表」を作成した。このように漢字・語彙研究のための基礎資料が完成した。本研究課題である,実社会と他教科に資する漢字・語彙指導法を確立する上でも,また,国語科教育全体の漢字・語彙指導研究の発展の上でも,貴重な資料が完成したと言える。なおこれらの作成においては,連携研究者である,国立国語研究所の近藤明日子氏に多大な協力,助言をいただいた。 また上記資料の作成と並行して,所属学会や大学紀要等において,本助成の援助に基づく論文発表,学会発表を行った。安田女子大学日本文学会『国語国文論集』においては,上記の資料と関連させ,他教科や社会に資するための,中学校における具体的な漢字の配当に関する提言を行った。また,全国大学国語教育学会筑波大会においては,「教科学習語彙の選定と活用」と題して,各教科の学習に必要で,かつ国語科において指導すべき語彙に関する提言を行った。またさらに,『安田女子大学紀要』においては,常用漢字表の「語例」に関する検討を行った。また別に,研究成果をまとめた単著『コーパスを活用した国語科学習指導法の構築』(安田女子大学実践教育研究所)を発刊することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の大きな目的の一つであった,教科書のデータ化並びに語彙表の作成については,中学校版となってしまったものの,ひとまず完成にこぎつけた。ただ,中学校教科書のデータ化並びに語彙表の作成に多くの時間と費用を費やした分,他校種の語彙表まで着手することができなかった。中学校と同様とまでにはいかないかもしれないが,可能な限り他校種のデータも取り入れながら,成果を拡大していきたい。 また,もう一つの大きな目的であった小学校学年別漢字配当表に関する資料については,自著『コーパスを活用した国語科学習指導法の構築』の中に取りまとめることができた。 成果発表については,これも当初からの目的であった中学校の学年別漢字配当については,その提言を行うことができた。ただ,語彙表,中学校の学年別漢字配当に並ぶもう一つの研究テーマである,定番教材の語彙指導については,今年度研究を進めることができなかった。今年度作成できた,最新の語彙表をもとに,来年度に具体的な提言を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,教科書の主要教材の言語分析を行い,作成した語彙表等との照合のもと,教材における指導すべき漢字・語彙に関する研究を行う。またこれまでの取り組みと合わせ,他教科,実社会に資する漢字と語彙の指導について,体系的な理論と,学年段階に合わせた実践案を作成する。具体的には,「トロッコ」「羅生門」などの文学教材と,「ちょっと立ち止まって」「水の東西」などの論説文教材を扱う。その上で,これまで扱ってきた「走れメロス」や「故郷」などの分析と合わせ,包括的な,教材で指導すべき漢字と語彙に関する提言を行う。 また,学会発表等を通じて語彙表の分析結果を公表していく。さらに,指導すべき語彙を明確に提示していく。今後の学習指導要領や教科書における例示の方法などを具体的に述べていく。 語彙表に関しては,まずは作成した中学校教科書の語彙表の活用に注力していく。小学校・高等学校の教科書については,中学校同様の全文のコーパス化は残された時間の中では難しいと思われる。しかし可能な限り,複数の単元や教材の漢字と語彙の分析を行っていきたい。
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Research Products
(7 results)