2015 Fiscal Year Annual Research Report
戦後美術教育における人間像の変遷と美術教育実践の多様化
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25381228
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Research Institution | Kyushu Women's University |
Principal Investigator |
谷口 幹也 九州女子大学, 人間科学部, 教授 (30335830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相田 隆司 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (20302903)
神野 真吾 千葉大学, 教育学部, 准教授 (90431733)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 戦後美術教育 / 美術教育 / アートする力 / 転換期日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度に行った研究成果は以下の通りである。 Ⅰ 戦後美術教育における人間像の変遷の解明/美学者・山本正男(1912-2007) の美術教育原理の再評価を行う。美術することの主体的な活動と、教育という主体的な活動そのものの中に、同一普遍な論理構造をとらえ同一の主体的・内面的な論理構造において、美術と人間形成とを同時に展開する戦後美術教育の思想的源流の重要性が明らかになった。 Ⅱ 美術教育実践の多様化に関する分析/教育界で重要視される「21世紀型学力」「コンヒテンシー」 (OECD)、「21世紀型スキル」(アメリカ)。経済界・産業界で重視される「クリエイティビティ」「イノベーション。日本の戦後美術教育が重視した「創造」「民主主義」「遊び」。重要概念を総括する概念として「アートする力」を示した。 Ⅲ 戦後学校教育の原理・方法の分析、新時代の美術教育実践の開発/日本の今日の表現、文化の問題を積極的に美術教育の問題として捉える必要があることを明らかにする。漫画、アニメ、ファッション、デザイン、ICT等、日本の大衆文化、サブカルチャーを、限界芸術の視線から人間と表現の問題として捉え直すことによって世界に波及する美術教育を示すことができることを明らかにした。 Ⅴ(Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ+Ⅳ)新たな時代の美術教育原理・方法の解明/戦後美術教育における「人間像」の検証を通して「私」という存在そのものを肯定的に捉え、より良い存在への変容を促す美的次元の経験の問題が、最重要課題であるということを明らかにする。新たな美術教育原理と方法は、戦後美術教育の検証と継承、限界芸術に見る市井の人々の表現、ヒューマニズムに基づく芸術、表現の捉え直しと、人間形成に関わる美術機能の問題、現代の美術様式分化と美術教育理論の多様化の関係を整理し、これを秩序づけうる基礎論によって確立することができることが明らかになった。
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