2017 Fiscal Year Research-status Report
国語科書写における用筆の分析をもとにした適切な書法の確立の研究
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25381251
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
衣川 彰人 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (80293728)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 書写 / 楷書 / 基本点画 / 用筆法 |
Outline of Annual Research Achievements |
基本点画を書く際の意識についてアンケート調査した結果の分析から、毛筆と硬筆への意識の違いについて見ると、大方、硬筆より毛筆の方が書きにくいという意識が持たれていることが分かった。ただ、そうした中でも、毛筆と硬筆で書きやすさや書きにくさといった意識がほとんど違わないものは「横画」であった。これに対して、毛筆と硬筆での意識が大きく違うものは「縦画」で、毛筆では、約53%もの者が書きにくいと感じているにもかかわらず、硬筆で書く際になると逆に約45%の者が書きやすいと感じている。また「曲がり、右上払い、点、転折」の4つの画においても同様に、毛筆と硬筆での差が大きい傾向にある。こうした結果と実際に書いてもらった用筆の資料と書く様子を撮影した動画データも照らし合わせながら、それぞれの点画の用筆の分析をしていくと、9種の基本点画の進行方向をもとに、水平方向・垂直方向・斜め方向に分けて傾向が見られた。それぞれの書き進められる方向に関連して、始筆部の用筆上の問題の生じやすさに違いが見られた。水平方向では、筆を右へと引っ張る動作からツノ現象が見られ、垂直方向では、十分に加えられた筆圧が、筆を下へと動かす際にいろいろな抜け方をすることが、ツノ・コブ・ツノコブ・ネジレといったあらゆる現象を引き起こす要因となっていた。また、斜め方向では、進行方向へと運筆する際に曲線的な用筆が含まれることや、日常生活ではあまりない動作による運筆があるなど、それぞれの点画がもつ特有な問題からの影響を受けて、始筆における用筆傾向の発生に違いが見られることが分かった。始筆における用筆上のさまざまな問題は、書字者一人ひとりの書き癖として、一部の個人に偏って発生するようなものではなく、点画ごとの特質と関連して、誰でも引き起こしてしまう可能性があるものだということが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成25~26年にわたり、家族の入院にともない介護等にあたることとなり、平成27~28年には、その後の手続きのため研究活動にも影響が出ていた。そのためビデオ撮影した用筆の分類作業が予定通りに進まず、用筆サンプルとの照合を通した用筆法の解明に時間を要することになっていたが、現在までに、各点画の始筆から終筆にかけての運筆傾向を分類し、その中でも、始筆部の用筆についての問題点とその発生要因についての研究を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、始筆部で起こるさまざまな用筆上の問題点が、送筆や終筆へとどのような影響を及ぼすかについて分析を進めているところである。今後は、各点画の始筆・送筆・終筆で生じる問題を明らかにした上で、それらを改善するための学習法や、問題点を生じさせないためにどのような指導を行ったら良いかという点からのアプローチも含めて、大学生などの初学者に対してさまざまな用筆の指導を試みていく。その中で、より適切な学習法や指導法についての研究を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
家族の介護等に伴う研究の遅れから、本年度までに収集した資料の分析を中心に研究を行ったため、当初の予定より助成金使用額が少なくなった。今後は、収集した資料をデータベース化していくための作業費や、研究成果を公開するための費用に助成金を使用していくことを計画している。
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Research Products
(2 results)