2015 Fiscal Year Research-status Report
グローバル社会に生きる日本の子どもの愛他性を育てる道徳教育プログラムの開発
Project/Area Number |
25381283
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮里 智恵 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70646116)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 道徳教育 / 愛他性 / 思いやり・親切 / 道徳教育プログラム / 愛他的葛藤場面 / 非表出的向社会的行動 / 表に表れない思いやり / 被援助 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は日本の小中学生の発達段階に即した愛他性育成の道徳教育プログラムを開発することである。平成25年度に愛他的葛藤場面における道徳判断に関する国内外の研究動向を検討した結果、日本の子どもには特有の発達の様相があることが明らかになった。これを受け、平成26年度には小学3年生から中学3年生までの児童生徒を対象に、愛他的葛藤場面における道徳的判断の様相、中でも「非表出的向社会的行動」の出現について明らかにした。研究の結果、「相手が校舎の陰で泣いている」場面では、中学2年生と中学3年生の子どもは小学3年生~中学1年生の子どもより有意に「非表出的向社会的行動」を示すことが明らかになった。 平成27年度には「被援助者」の視点から見た向社会的行動について研究した。一般的に、相手を助ける「援助行動」は、援助をする側が相手を助けた時点で成立したとみなされるが、実際には援助を受ける側、すなわち「被援助者」がその援助行動が真に必要で十分なものであったと認識しなければ成立したとは言えない。そこで、平成27年度は「被援助の立場から考える援助行動」に注目し、平成26年度の質問紙調査と同じ場面について、自分が援助を受ける立場なら相手にどのように行動してほしいかを尋ねた。研究の結果、中学2年生と中学3年生では、「自分が校舎の陰で泣いている時は援助行動を望まない」という生徒の割合が、それ以前の学年より有意に多かった。この結果は、平成26年度の「非表出的向社会的行動」に関する研究結果と表裏の関係で一致すると考えられる。 平成30年度、31年度から完全実施される「特別の教科 道徳」においては「考える・議論する」授業が求められているが、そのためには特に中学校において、同一場面でも多様な判断が存在する教材を用い、生徒が様々な道徳的観点から主体的に検討することができる授業づくりをめざすことが重要と考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では平成27年度は次の2つの研究を予定していた。 ①児童生徒の愛他性の発達の様相についての学会発表。 ②小中学校用、愛他性育成の道徳資料の作成と授業実践及び道徳授業プログラムの開発。 これらのうち、①については「学習開発学研究」への投稿を行い、掲載された。 ②については、愛他性育成の道徳資料の作成までは至ったが、道徳授業の授業実践と道徳授業プログラムの開発には至っていない。その理由は、平成26年度に実施した児童生徒対象の愛他性の発達に関する質問紙調査の結果、当初仮説を立てていた「非表出的向社会的行動」の存在に加えて、「被援助者の立場から考える援助行動」についても検討する必要性が生じたためである。平成27年度はこの観点からの検討を行ったため、交付申請書通りの進捗には至らなかった。しかしながら、児童生徒の愛他性の発達の様相をより細かく明らかにすることができ、当初予定していたものより一層児童生徒の実態に近い道徳授業プログラムの開発が可能となる見通しを持つことができた。 よって、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は小中学生の愛他性育成のために作成した道徳資料について、授業実践を行い、検討・修正ののち道徳授業プログラムを開発する。開発したプログラムは学会発表するとともに、広く広報して学校現場の授業に資する予定である。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた旅費と謝金が想定額を下回ったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度が研究の最終年度となるため、報告書の作成や開発する道徳教育プログラムの公表など、研究成果を広く発表するために使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)