2015 Fiscal Year Research-status Report
成人自閉症スペクトラム障害に対するデイケア機能を活かした多角的支援法の開発
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25381324
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
加藤 進昌 昭和大学, 発達障害医療研究所, 所長 (10106213)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小口 江美子 昭和大学, 保健医療学部, 教授 (50102380)
稲本 淳子 昭和大学, 医学部, 准教授 (20306997)
定松 美幸 金城学院大学, 人間科学部, 教授 (90252387)
金井 智恵子 昭和大学, 発達障害医療研究所, 講師 (00611089)
有木 永子 東洋学園大学, 人間科学部, 講師 (40319611)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 発達障害 / 自閉症スペクトラム(ASD) / 感覚統合 / ジェンダー / デイケアプログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
成人自閉症スペクトラム(ASD)のデイケアについては、本研究費ほかによる研究として、すでに昭和大学附属烏山病院を中心に着実に実績を挙げつつある。ショートケアプログラムは全20回のマニュアルとワークブックとしてまとまりつつあり、本年度のうちには星和書店から刊行予定である。本研究はこの標準化プログラムを基礎として、当事者の特性別にグループ化して、付加的プログラムは必要か、必要とすればその規模と内容はどのようなものかを探るものである。 1)感覚統合訓練としての音楽運動療法を、過去2年に引き続きASD患者9名を対象に実施した。これまでの参加症例数は合計で22名となり、気分とQOLの評価も蓄積されつつある。抑うつ気分、混乱、身体機能、社会的役割といった項目で有意に改善がみられた(小口)。2)ASDは男性に多く、配偶者は多くは女性である。無意識のうちに現れる妻への気配りの欠如、非言語的コミュニケーションの無さから妻がうつ状態になる状態は、マスコミによって「カサンドラ症候群」という名称が喧伝された。その症状があるとして研究代表者の外来を訪れる夫婦が最近飛躍的に増えつつある。彼女らを集める「パートナーの会」を3回実施し、参加者からは強い支持が得られ、その様子は読売新聞に掲載された(加藤、金井、定松)。3)当事者の手記の公開を引き続き行った。家族や配偶者の手記も加えて出版に向けて準備中である(定松)。4)大学生(同等レベルの若年者も含む)対象の月1回のグループワークを開始した。成果について平成27年8月に関係者が集まり、意見交換をした。就労支援にもその活動を広げる方向で準備をしている(加藤、丸田)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジェンダー意識に問題をかかえているASD当事者については、これまで有木が担当していたが、病気療養が長引いているために、昭和大学医学部精神医学講座の森井智美員外助教がもっぱら臨床を担当した。類縁の患者は多数ではないが、その後も徐々に増えてきており、この問題はASDの精神病理に深い関係があると確信しつつある。というのはジェンダーに寄り添った自己像意識を当事者に持たせることによって、彼らの社会的自立に明らかな好影響があるからである。 本研究計画の基礎となるショートケアプログラムの全国化については、第3回成人発達障害支援研究会を平成27年9月に開催し、約200名の参加を得た。この活動は世界にも知られつつあり、分担研究者の金井はSpringer社から刊行された英文専門書籍の1章を担当した(研究業績参照)。 大学生当事者のグループワークは、研究代表者が兼任している公益財団法人神経研究所で定期開催するに至っているが、この活動に早稲田大学保健センターが強い関心を寄せており、大学内での活動として具体的な連携の機運ができつつある。 以上のような成果に基づいた準備状況から、最終年度である次年度に向けて、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度である。これまでの成果を平成28年9月にエジンバラで開催される第11回Autism Europe International Congressで連携研究者である松村雅代(昭和大学兼任講師)、横井英樹(昭和大学発達障害医療研究所)が発表予定である。すでに20分の口演枠を確保した。なお、平成29年度にはこれまでの成果をまとめて世界に発信する場として、研究代表者が中心になって国際会議を開くべく準備を行っている。 成書としては、すでに述べたようなショートケアプログラムのマニュアル・ワークブック、当事者手記を中心に臨床家の座談会の記録も入れた単行本に加えて、正確な知識に基づかない発達障害診断の問題に着手している。 なお、デイケアの大きな機能は当事者が安心して集うことができる居場所の提供であり、彼らの社会的自立に果たす効果も大きい。さらに多くの当事者の日常的な生活態度を観察できる場であることは、診断の確実性を担保することにつながる。また日常的に研究も行っている場に臨場していることから、自発的な研究協力にもつながりやすい。こういった機能がかみ合ったことにより、ASD当事者が100名以上参加して「人工知能によるASD診断法を世界で初めて開発した」ことが本年4月15日にすべての全国紙に報道された(Nature Communications. 7:11254. doi: 10.1038/ncomms11254. www.nature.com/naturecommunications: 2016)。
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Causes of Carryover |
研究分担者のうち2名が病気の手術と長期療養のため、一時的に研究が滞ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の加速にかかる人件費・謝金や、最終年度としての学会発表等、成果の公表を行うために使用する。
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Research Products
(21 results)