2013 Fiscal Year Research-status Report
酸化物ナノチューブとグラフェンの複合化と光電気化学によるキャラクタリゼーション
Project/Area Number |
25390021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
坂東 俊治 名城大学, 理工学部, 教授 (20231540)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 酸化物 / ナノチューブ / 光電変換 / 太陽電池 |
Research Abstract |
酸化チタンナノチューブに関しては,アナターゼ型酸化チタン粉末を160℃,10規定のNaOH水溶液中で10時間還流し,粗精製試料を得ることに成功した.さらに,遠心分離と洗浄を繰り返し,副生成物を取り除き,高純度化する方法も確立した.現在,バンドギャップを調整するために,Tiの一部をS元素に置換する実験に取りかかっている.ドーピングについては,現在,酸化チタンナノチューブに先行して,酸化鉄ナノチューブのFeの一部をZn元素で置換することに成功している.酸化鉄ナノチューブの作製は,資源として豊富に存在するFe元素の利用をめざし,本科研費により新たに取り組んだものである.酸化鉄ナノチューブは,自己組織化してシート状になった界面活性剤表面で,硝酸鉄水和物を縮合反応させることにより作製する.反応後,得られたゲルを乾燥することにより,界面活性剤中に残存する溶液が蒸発し,収縮することによりロール状に巻きあげられ,ナノチューブ状になる.その後,空気中で熱処理を行い,活性剤を燃焼させ,高純度酸化鉄ナノチューブを得る.Zn元素のドープは,硝酸鉄水和物に硝酸亜鉛水和物を必要量添加し,同様な方法で行うことができた.得られたZnドープ酸化鉄ナノチューブは,マグネタイト構造を有することを見出し,硝酸亜鉛水和物の添加量を制御することよりZn/Fe 原子比として 0.03から0.30(0を含む)まで変化させることに成功した.また,バンドギャップの大きさも,光吸収の測定により評価した.Znをドープしない酸化鉄ナノチューブでは,2.4eVであったものが,Zn/Fe比を0.1まで増加させると,急激にバンドギャップが狭くなり2.0eV程度になることを見出した.このことはZnドープにより,620nm程度の太陽光まで利用できることを示すものである.さらに,透明電極応用を見据えたグラフェン膜作製も並行して実施している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初は,電解質溶液を用いた湿式による光電変換特性を光電気化学的に評価することを計画していた.しかし,昨今の状況から判断して固体電荷分離方式に計画を切り替えた.ただし,基本的な方針を変更した訳ではなく,電子移送層としては当初の計画通り,大きな比表面積が期待でき,チューブ軸方向へ電子輸送を速やかに行うことができる酸化物ナノチューブ試料を用いる.その上で,正孔移送として固体電荷分離材料に変更したため,エネルギー準位調整の目的で,Znドープを優先させ,光電変換特性の評価を遅らせた.ただし,湿式方法による評価を全く行わなかったわけではなく,酸化鉄ナノチューブと水酸化フラーレンを複合化させた試料において実施し,国際会議のプロシーディングペーパーとして発表している.
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Strategy for Future Research Activity |
酸化チタンナノチューブに関しては,研究実施例も多いため,本科研費で取り組んでいるZnドープ酸化鉄ナノチューブの太陽電池応用を見据えた光応答特性を評価する上での指標となる試料として,取り扱うことにする.つまり,今後Znドープ酸化鉄ナノチューブを,光エネルギーを電気エネルギーに変換する際の電子移送材料として取り扱い,研究用試料とする.正孔移送材料としては,その特性がすぐれているペロブスカイト構造を有する有機金属ハライド材料を主に用いることを計画し,出発原料となる材料調整を行っていく.他の正孔輸送材料としては,当初計画した水酸化フラーレン分子も用い,評価していく.光応答特性の評価は,光電変換セルを作製し,波長選別した光をセルに照射しながら電気化学的に行う.セルの構造作製の第一段階として,カソードにFTOガラスを用い,その上に緻密な酸化鉄薄膜層を,濃度や粘度調整した塩化鉄溶液やアセチルアセトン鉄溶液をスピンコートし,その後,空気中で熱処理することにより作製する.次に,Znドープ酸化鉄ナノチューブにアセチルアセトンを添加し,粘度調整した溶液を作製し,先ほどの緻密酸化鉄薄膜層の上にスピンコートする.その後,正孔移送層となる有機金属ハライドペロブスカイト溶液をスピンコートし,熱処理を施す.最後に,アノードとして金電極を真空蒸着して,光電変換セルとする.現在いろいろなZn/Fe比を有するZnドープ酸化鉄ナノチューブが作製でき,バンドギャップ制御も行えるため,電子状態を考慮しながら,光応答特性(光電変換特性)の評価を進めていく予定である.また,超音波ミスト噴霧によるグラフェン膜作製の実験も並行して行い,今後,FTOと置き換えるように,グラフェン膜を透明電極として用い,同様な方法で評価していくことも計画する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品購入による軽微な余剰金額であり,端数調整することなくH26年度予算に組み込んだ. 前年度繰越金704円は,物品購入に充てる.
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Research Products
(5 results)