2013 Fiscal Year Research-status Report
エピタキシャル多層薄膜による低損失プラズモニック・メタマテリアルの実現
Project/Area Number |
25390100
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
内野 俊 東北工業大学, 工学部, 教授 (40614970)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | メタマテリアル / プラズモニック結晶 / エピタキシャル成長 / 光電子デバイス / 多層構造 |
Research Abstract |
近年、携帯電話や携帯情報端末の普及に伴い、情報通信機器のより一層の高性能化および高機能化が求められている。プラズモニック・メタマテリアルは貴金属等の表面に局在する表面プラズモンとナノメートルオーダーの人工的な周期構造を組み合わせた複合機能材料で、光領域の電磁波の制御が可能になるので、光デバイスやバイオセンサなどの高性能化および小型化を実現する新材料として近年ますますその重要性が増している。しかし、メタマテリアルで光エネルギーを表面プラズモンへ変換するときに、金属表面で大きなエネルギー損失があり、理論から予想される高性能が得られなかった。 そこで、本研究では高効率材料のAgを含むエピタキシャル多層薄膜成長技術を開発し、粒界のない表面粗さ0.2 nm以下の平坦な表面を形成することによって、近赤外領域の光エネルギーを従来の20倍以上の高効率で制御する材料を開発する。初年度にあたる平成25年度は、超高真空スパッタ装置を用いてAgおよびAuの単結晶薄膜成長技術の開発を行い、以下の結果を得た。 1.Ag単結晶薄膜を堆積直前に劈開したLiF基板およびマイカ基板を用いて、堆積温度400-650℃で作製した結果、LiF基板上ではアイランド状に成長して連続膜が得られないが、マイカ基板上では連続膜が得られることがわかった。マイカ基板上に堆積したAg薄膜は堆積温度400℃では多結晶、500℃以上では単結晶になっていた。しかし、600℃以上ではLiF基板と同様にアイランド状に成長した。 2.次に、Ag/AuおよびAg/Alの多層構造を検討した。その結果、LiF基板上で単結晶膜が得られることがわかった。しかし、今までのところ平坦な連続膜は得られていない。プラズモニック・メタマテリアルへの応用にはLiFの方がマイカよりも基板として適しているので、平成26年度は多層構造の最適化に注力する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.本年度は,Ag単結晶薄膜形成技術の開発を中心に研究を行った。当初、Ag単結晶薄膜を形成するために、地元企業と協力して超高真空スパッタ装置を開発する予定だったが、予算と日程が間に合わなかったので、物質・材料研究機構の既存施設を使用して薄膜を作製した。Agと格子定数のミスマッチが2%以下のLiF基板を用いてAg薄膜成長を行った結果、基板温度650℃の高温で成膜しても連続膜が得らないことがわかった。そこで、Au単結晶成長に従来から用いられているマイカを基板としてAg薄膜を作製した。その結果、堆積温度400-500℃では多結晶の連続膜、500-600℃では単結晶の連続膜、600℃以上ではLiF基板と同様にアイランド状の膜が成長することがわかった。 2.次に、多層構造を用いたAg単結晶薄膜形成技術を検討した。Ag単結晶がAl単結晶上にエピタキシャル成長することが報告されているので、Alをバッファ層としてLiF基板上にAg薄膜を堆積した。その結果、堆積温度550-600℃では溝が多数存在して連続膜が得られなかった。バッファ層としてAuを用いた場合も堆積温度600-650℃では、ボイドが存在して平坦な膜が得られなかった。今後は成長条件の最適化を行い、ボイドを削減する。 3.本年度は、Ag単結晶薄膜の結晶性の評価を主にSEMで行った。今後、X線回折、エリプソメーター、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて詳細に薄膜評価を行う。また、電気的特性評価に用いるプローブステーションを購入し、システムの立ち上げを完了した。 4.本研究で得られたAg単結晶薄膜を用いてナノ構造プラズモニック・メタマテリアルを作製し、近赤外領域の光学特性を評価する。それに先立って、研究協力者と打ち合わせを行い、メタマテリアルの作製の準備を整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.Ag単結晶薄膜を得るために、LiF基板上のAg/AuおよびAg/Al薄膜の多層構造の最適化を行う。次に、マイカ基板上のAg単結晶薄膜およびLiF基板上のAg/AuおよびAg/Alの多層構造単結晶を用いて、ナノ構造プラズモニック・メタマテリアルの作製と光学的特性評価を共同研究を利用して実施する。 2.Ag単結晶薄膜の結晶性をX線回折、透磁率と誘電率の評価をエリプソメーター、表面粗さの評価を走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて行う。また、薄膜の電気的特性評価をプローブステーションを用いて行う。 3.次に、金属単結晶薄膜上の単結晶グラフェン成長技術を開発を行う。前年度までに得られた結果を基にして、AgまたはAu単結晶薄膜上に単結晶グラフェンを成長する。近年、Cuフォイルを触媒とした化学気相成長法(CVD法)でグラフェンの大面積化と量産化が行われるようになったが、Cuフォイルは多結晶なのでCVD法で成長させたグラフェンには、しわ (wrinkle) が多数存在する。この多結晶グラフェンには粒界が存在し、キャリア散乱によって移動度が低下するのでデバイスへの応用には適さない。そこで、粒界のない平坦な表面を持つ金属単結晶を用いて、単結晶グラフェンのエピタキシャル成長を行う。 4.Ag単結晶薄膜を利用したプラズモニック・メタマテリアルの欠点は、Agが大気中で酸化して特性が劣化することである。そこで、Ag単結晶薄膜を単結晶グラフェンで覆うことによりAgの酸化を防ぎ、低損失プラズモニック・メタマテリアルを作製する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
使用予定の材料の発注が年度内に間に合わなかったため。 次年度に、必要材料の発注を本年度からの繰越金を用いて行う。
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