2014 Fiscal Year Research-status Report
エピタキシャル多層薄膜による低損失プラズモニック・メタマテリアルの実現
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25390100
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
内野 俊 東北工業大学, 工学部, 教授 (40614970)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | メタマテリアル / プラズモニック結晶 / 光電子デバイス / 多層膜 / グラフェン / エピタキシャル成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、携帯電話や携帯情報端末の普及に伴い、光デバイスのより一層の高性能化および高機能化が求められている。プラズモニック・メタマテリアルは貴金属等の表面に局在する表面プラズモンとナノメートルオーダーの人工的な周期構造を組み合わせた複合機能材料で、光領域の電磁波の制御が可能になるので、光デバイスやバイオセンサなどの高性能化および小型化を実現する新材料として近年ますますその重要性が増している。しかし、光エネルギーをメタマテリアルで表面プラズモンへ変換するときに、金属表面で大きなエネルギー損失があり、理論から予想される高性能が得られなかった。そこで、本研究では高効率材料のAgを含むエピタキシャル多層薄膜成長技術を開発し、粒界のない表面粗さ0.2 nm以下の平坦な表面を形成することによって、近赤外領域の光エネルギーを従来の20倍以上の高効率で制御する材料を開発する。2年目にあたる平成26年度は、超高真空スパッタ装置を用いてAg, Au, Cuの単結晶薄膜成長技術の開発を行い、以下の結果を得た。 1.Ag薄膜をマイカ基板上に堆積温度300-600℃で作製した結果、堆積温度350℃付近で膜厚80 nm以下の平坦な連続薄膜が得られた。更に基板温度を高くすると、アイランド状に成長して連続薄膜が得られなかった。堆積温度500℃では、連続薄膜を得るのに膜厚110 nm以上が必要なことがわかった。 2.LiF基板上に堆積したAg薄膜では、アイランド状に成長して連続薄膜が得られなかった。そこで、Au/AgおよびAl/Agの多層構造を検討した。その結果、Au/Ag 薄膜(堆積温度600℃付近)で膜厚90/50 nmの平坦な連続膜が得られた。 3.プラズモ二ック材料であるグラフェンの単結晶をCVD法を用いて、マイカ基板上に堆積したCu単結晶薄膜上に成長させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.物質・材料研究機構の超高真空スパッタ装置を利用して金属薄膜を作製した。昨年度の結果をもとに、マイカ基板上のAg単結晶薄膜形成技術の開発に注力した。その結果、堆積温度350℃で膜厚80 nm以下の平坦な連続薄膜が得られることがわかった。単結晶を得るために堆積温度を500-600℃に上昇すると、アイランドが形成されるため、膜厚を100 nm以上に増やさないと連続膜を得ることができなかった。今後は、堆積温度と結晶構造および表面粗さのとの関係を詳細に調べる。LiF基板上のAg薄膜は、薄膜を高温で単結晶化するとアイランドを形成するため連続膜を得ることができなかった。そこで、多層膜を用いたAg単結晶薄膜形成技術を検討した。バッファ層としてAu薄膜を用いた結果、堆積温度500-650℃で平坦な連続膜が得られることがわかった。 2.Ag単結晶薄膜の表面構造は、主に走査電子顕微鏡(SEM)を用いて評価した。現在、X線回折(XRD)を用いて薄膜の結晶性を評価している。他に、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いた表面構造の解析、エリプソメーターを用いた光学定数の評価を行っている。単結晶グラフェンはラマン分光の他、本研究助成金で購入したプローブステーションを用いて電気的特性を評価している。 3.集束イオンビーム(FIB)を用いて、本研究で得られたAg単結晶薄膜からナノ構造プラズモニック・メタマテリアルを作製した。その結果、Au単結晶薄膜で作製したメタマテリアルと同等以上の性能が得られた。今後は、サウサンプトン大学の共同研究者と実験結果を詳細に解析する。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ナノ構造プラズモニック・メタマテリアルの高性能化のため、Ag単結晶膜の薄膜化を進める。次に、マイカ基板上のAg単結晶薄膜およびLiF基板上のAu/Ag多層膜を用いたナノ構造プラズモニック・メタマテリアルの作製とその光学的特性の比較を行う。 2.本年度に引き続き、Ag単結晶薄膜の結晶性の評価をX線回折、光学定数の評価をエリプソメーター、表面粗さの評価を走査型プローブ顕微鏡を行う。また、薄膜の電気的特性をプローブステーションを用いて評価する。 3.Ag単結晶薄膜を利用したプラズモニック・メタマテリアルの欠点は、Agが大気中で酸化して特性が劣化することである。そこで、Ag単結晶薄膜を単結晶グラフェンで覆うことによりAgの酸化を防ぐと同時に、プラズモニック材料であるグラフェンにより光学特性の高性能化を図る。
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Causes of Carryover |
使用予定の材料の発注が年度内に間に合わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度から繰越金を用いて、次年度に必要な材料の発注を行う。
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