2013 Fiscal Year Research-status Report
軟X線顕微鏡による毛髪試料の酸化ダメージとカルシウムの高分解能化学マッピング
Project/Area Number |
25390128
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
伊藤 敦 東海大学, 工学部, 教授 (80193473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大東 琢治 分子科学研究所, 極端紫外光研究施設, 助教 (50375169)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 毛髪 / 元素分布 / カルシウム / 走査型軟X線顕微鏡 / ズーミング管 / 蛍光X線マッピング / 化学マッピング |
Research Abstract |
1)人工酸化処理を行った毛髪試料の酸化ダメージ分布とCa分布のサブミクロン観察: 観察では、毛髪中心部のメデュラと周辺部のキューティクルでの酸化ダメージとCa分布の相関に着目するために、メデュラが確実に存在する毛髪試料の選択をまず行った。これは、メデュラはすべての毛髪に存在するわけではないためである。選抜には赤外線検出器(IRスコープ、研究協力者のカネボウ化粧品研究所井上博士のご厚意による)を用いた。人工酸化処理は過酸化水素とアンモニア混合溶液により行い、毛髪試料の5cmごとの部位を観察試料として、20ミクロン厚にカットし、Photon Factoryでの密着型X線顕微鏡および蛍光X線マッピングにより、酸化度とCa分布をそれぞれ画像化した。分解能はそれぞれ0.5および5ミクロン程度であった。未処理の試料においてもメデュラで顕著なCa蓄積が観察され、それは人工酸化処理を行った後、Ca溶液に浸漬した場合でも変化が見られなかった。一方、キューティクル部位では酸化処理によって大きくCa蓄積が増大し、両部位でのCa蓄積の機序の違いが明らかとなった。 2)走査型軟X線顕微鏡によるイメージングの条件検討: 分子科学研究所UVSOR施設に設置された走査型軟X線顕微鏡(STXM)は0.1ミクロン以下の高分解の化学マッピングができる装置として期待されている。25年度は毛髪試料イメージングのための試料条件、顕微鏡露光条件などの検討を行った。ビームタイムの関係から毛髪試料は準備できなかったため、ヒト培養細胞の観察をN-KおよびCa-L吸収端にて行った。併せてCa含有化合物のXANES測定も行い、化学マッピングの条件を求めた。さらに、Photon Factoryで使用した厚い毛髪試料のイメージングを試みたが、厚すぎてスペクトルの情報を得ることができなかった。今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Photon Factoryでのメデュラを有する毛髪試料の酸化度イメージングは順調に進んでいる。分子研STXMについても生体試料の化学マッピングを初めて行い、高分解能の細胞画像が取得できた。また化学マッピングの基礎データとなる生体分子のXANES測定結果も得られている。しかしながら、S-L吸収端でのXANES測定および細胞試料イメージングは、試料の厚さの問題もあり、結果が得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
Photon Factoryでの酸化度イメージング:26年度はさらに試料数を増やし精度を上げること、酸化処理方法として酸化薬剤ばかりでなく紫外線、熱なども追加して、それぞれの特徴を比較する。また、25年度に購入した新規MCPを用いて、より鮮明な画像取得を行う予定である。分子研STXMによる超高分解能イメージングにおいては、厚さの薄い毛髪試料を作成し、Ca-L, S-L吸収端にてCaおよび酸化度の分布測定を行う計画である。 なお、25年度Ca分布を求めるために利用したPhoton Factoryの蛍光X線マッピングは、ビームライン装置が担当者定年により廃止となったため、SPring-8あるいは原子力開発機構高崎両氏応用研究所でのイオンビームを用いた装置の検討をはじめている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
毛髪、細胞などの生体試料を載せるための基板としてSiN薄膜を利用しますが(20万円-30万円/100枚)、25年度は研究分担者および研究協力者の厚意により無償で提供いただいたため、その金額分を支出するには及びませんでした。 26年度は、25年度の予備的実験を踏まえて、本実験のために観察試料を予備も含めて数多く準備する必要があり、SiN膜もそれに応じて大量に購入する予定です。また、輸入品のため、金額も上がる可能性があります。このような理由から、次年度使用額をSiN膜購入に充てる計画です。
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