2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400006
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
澤邉 正人 千葉大学, 教育学部, 准教授 (60346624)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | クイバー / 単体複体 / 部分群束 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象は有限群 G の部分群複体である. 即ち G の(通常は G-共役で閉じているような)部分群の族 X に対して, それを包含関係と共に半順序集合 (X,<) と見なす. このとき (X,<) の順序複体 Δ(X) を G の部分群複体と呼ぶ. 一方 (X,<) は自然にクイバーと見なすことが出来る. そこで Δ(X) をより多角的に考察するために, 任意のクイバー Q と Q のパスから成る部分族 H に対してパス複体と名付ける抽象単体複体 T(Q,H) を新たに導入した. T(Q,H) は部分群複体の概念を含むものである. この状況の下で当該年度は T(Q,H) の一般論の整備と, 部分群及びコセットから定義されるクイバー gQ, cQ に対するパス複体の考察を行った. 具体的な研究実績は以下の通りである.
1. T(Q,H) の一般論として T(Q,H) が可縮となる十分条件を論じ, また T(Q,H) に付随するホモロジーを新たに導入した. 2. 特殊なパスの族 K に対して T(cQ,K) のオイラー標数やホモロジーの計算を行った. 3. T(cQ,H) とコセット幾何との関連を明らかにした. 4. T(gQ,H) から T(cQ,H) へのある連続写像を考察した. 5. 特殊なパスの族 K に対して T(cQ,K) の連結成分の個数が, K から定義される部分群の指数で与えられることを突き止めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
任意のクイバー Q とそのパスから成る部分族 H に対してパス複体 T(Q,H) を導入し, 基本的な一般論を整備した。このことにより今後の更なる理論展開に向けてその土台をしっかりと据えることが出来た. またクイバーに付随するホモロジーを導入したことにより, 部分群複体のホモロジカルな考察手段を提供することが出来た. さらにコセットによるパス複体の連結成分の個数が対応する部分群達から生成される部分群の指数で与えられることを証明し, 有限群論との関係も明らかにすることが出来た. しかしながらパス複体の不変量であるホモロジーの構造が我々に何を教えてくれているかは今後の課題である. また今回, 考察の中で具体的に用いたパスはかなり特別なもの(整っているもの)である. より複雑なパスを用いた考察も今後の課題である. この様に新しい研究結果が得られたと同時に, 新たな課題が自然に導かれたことで, 本研究は概ね順調であると判断するものである.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは今回の研究結果から継続する課題を考察する. それはクイバー Q に付随するホモロジーの更なる拡張である. 実際にこのホモロジーは Q から定義されるパス代数とその自由基であるパス全体から定義される. そこでこの状況を係数環 R に対して R-自由基をもつ R-代数に拡張可能であるように思われる. これにより行列代数, 群代数, バーンサイド代数, そしてパス代数を含むホモロジーの理論構築を目指すことが出来る. 一方, 部分群複体に立ち返ると, これまでの先行研究結果は 1 つの素数 p に対する p-部分群複体に関するものである. しかしながら有限群の素数グラフとの関わり考えると異なる 2 つの素数 p,q に対して p-部分群複体と q-部分群複体を同時に考えることは極めて重要である. このとき自然に考えられる対象として素数の集合πに対してベキ零 π-部分群からなる複体が挙げられる. そこで, まずこの複体とホモトピー同値となるような極小の部分複体を考察する. さらに, 対応するコセットのパス複体やそのホモロジーを計算し, その結果を元の群の構造に反映させることを試みる.
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