2013 Fiscal Year Research-status Report
測度論的拡大性を持つ微分可能力学系の特徴付けに関する研究
Project/Area Number |
25400105
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
酒井 一博 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (30205702)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 力学系理論 / 拡大性 / 確率測度 / 双曲性 / 占有的分割 |
Research Abstract |
μを距離空間(X,d)上の確率測度とする。写像fがμ-拡大的(測度論的拡大性の定義)であるとは,あるδ>0が存在し,すべてのx in X に対し μ(Г_δ(x))=0が成立することをいう。ただし,Г_δ(x)={y in X : d(f~n(x), f~n(y))<δ(∀n in Z)}とする。本研究では,測度論的拡大性の概念を微分可能閉多様体上の微分可能力学系に導入し,拡大性を満たす微分同相写像を測度論的視点から考察するとともに,微分幾何学的力学系理論の立場から特徴付ける。 微分可能閉多様体M上の微分同相写像の全体にC~1-位相を導入した空間をDiff(M),拡大的な微分同相写像全体をEで表す。f in Diff(M)とし,M上の確率測度全体をM(M),f-不変確率測度μin M(M)の全体をM_f(M),エルゴード的なμin M_f(M)の全体をM~e_f(M)で表す。本研究では,以下の集合を考察の対象とする:PE={f in Diff(M):μ-拡大的(∀μin M(M))},IE={f in Diff(M):μ-拡大的(∀μin M_f(M))},EE={f in Diff(M):μ-拡大的(∀μin M~e_f(M))}. E, IE のC~1-位相に関する内点集合(intAで集合Aの内点を表す)について「intPE= intE」「intIE = Ω-安定性」が成り立ち,測度論的拡大性と双曲性との関係は明確となっている(論文は,2014年,専門雑誌に掲載された)。平成25年度の課題は,f in intEEに対し,I. Ω(f)=∪_{μin M~e_f(M)}supp(μ)となること,II. Ω(f)上に占有的分解が存在すること,の証明である。ここで,supp(μ) は,測度μの台とする。 上記課題I.II.の解決準備に向け,現在,EEの具体例(3次元多様体上の推移的ではあるが非双曲的な写像空間の例)に対し,その内点の構造解明に取り組んでおり,概ね解明されつつある。しかし,安定多様体の可測性等の証明が不十分であり,現時点ではその完全な解明には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度研究計画にある,課題I.II.の解明のための準備段階として,まずEEの具体例(3次元多様体上の推移的ではあるが非双曲的な写像空間例)に対し,その内点の構造解明に取り組んだ。本研究の推進には,この例の微分幾何学的構造の解明が必要不可欠である。この例は,最初に,3次元トーラス上に推移的ではあるが非双曲的な写像を構成し,次にそれをC~1-位相に関し摂動することで(写像空間が)構成される。摂動後の写像も摂動前の写像と位相的には同じ構造を持っていることがわかるので,当初は,EEの開集合を成すと考えていた。しかし,摂動後の写像の安定多様体の可測性等の証明が不十分であり,現時点ではその完全な解明には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の推進には,上記具体例の微分幾何学的構造の解明が必要不可欠である。摂動後の写像の安定多様体の可測性等を証明する必要があり,これについては,測度論的力学系理論の専門家に知識の提供を受ける。 f in intEE とする。26年度においては課題I,IIの解決を目指す。課題Iの証明にはPughの閉補題を用いる。課題IIの解決に向けての基本方針は,粗い議論ではあるが以下の通り:ある測度μ in M~e_f(M)に対しsupp(μ)上に占有的分解が存在しないと仮定する。Maneのエルゴード的閉補題 により,fの C~1-位相に関する近傍に,占有的分解を持たない周期軌道を有するgが構成できる。占有的分解が存在しないことから,gのC~1-位相に関する近傍に吸引的周期点又は反発的周期点を所有するg が存在することがわかる。その周期軌道の近傍に,エルゴード的確率測度を持ち拡大的ではない(部分的)力学系を構成することにより矛盾を導く計画である。
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Research Products
(3 results)